研究課題
誘惑下の自制問題とは,意思決定者が複数の価値基準を同時に持つ結果,心理的葛藤に直面することである.本研究では,相互依存関係にある複数個人の自制問題の分析を目的に,自制問題の代表的モデルであるGul-Pesendorferの選好を戦略型ゲームに取り入れ,「自制ゲーム」という新しいクラスのゲームを提案した.まず,自制ゲームにおける均衡概念を定式化し,均衡の存在証明を行った.また,典型的な自制ゲームのクラスの公理的基礎を与えた.その応用として,友人効果の下でのコミットメントデバイス需要を分析し,コミットメントデバイスの供給制約によって,プレイヤーの厚生を高め得ることを明らかにした.次に,自制ゲームを構成する利得関数が凹関数である場合の分析を行った.このクラスの自制ゲームでは,最適反応が自制行動かコミットメント行動のいずれかになる.このことを利用して均衡を簡単に計算する手法を提案し,応用として寡占市場における共謀ゲームを分析した.さらに,情報不完備下の自制ゲームとしてベイジアン自制ゲームを提案した.このゲームにおいてプレイヤーがコミットメント行動を選ぶと,後に得た情報を意思決定に活かすこができなくなる.これは情報の機会費用である.寡占市場における共謀ゲームをベイジアンゲームに拡張し,コミットメント費用,情報の機会費用,自制費用などが共謀の成否にどのような影響を及ぼすか分析した.その他,ベイジアン自制ゲームに関連する基礎研究として,①主観確率だけでなく不確実性の解消を表現する個人の情報構造(私的情報)も導出するSavageモデルの動学的拡張,②過去の行動履歴が主観的情報構造に影響を与える確率的割引モデル,③WARPを満たさない自制モデル,④過去の行動履歴に誘惑が依存する内生的選好形成を伴う自制モデル,⑤ベイジアンゲームにおける情報の社会的価値の特徴付け,などの分析を行った.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Journal of Economic Theory
巻: forthcoming ページ: forthcoming
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