研究課題/領域番号 |
24530195
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花薗 誠 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60362406)
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研究分担者 |
中林 純 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (30565792)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 総合評価方式入札 / ゲーム理論 / 構造推定 / オークションデータ |
研究概要 |
研究代表者花薗と研究分担者中林は研究協力者鶴岡昌徳氏とともに、総合評価入札のゲーム理論的基礎について研究し、一般性が高くかつ取り扱いやすい形での分析のフレームワークを発見し、入札者の戦略的な意思決定問題について新しい知見を得た。とくに、既存研究で扱われた「加算式評価」のみならず、実務で頻繁に使用されている「除算式評価」やその他の評価方法についても、ゲーム理論的な入札行動が明らかになるとともに、入札形式の違い(一位評価、二位評価)は発注者にとってどのようなパフォーマンスの差を生むのかが解明され、一位評価と二位評価のどちらが期待評価値を改善するかについて条件を整理した。本研究は24年度にいくつかの大学でのセミナーで報告されたのち、国際学会(エコノメトリックソサイエティ、ヨーロッパ産業経済学会)でも報告・討論され、得られたコメントをもとに論文としてまとめ、現在投稿準備中である。 研究分担者中林は、東京大学大学院経済学研究科博士課程の広瀬要輔氏とともに,総合評価入札の実証分析,およびその基礎となる構造推定の手法について上記の理論研究に基づいた研究を進め,データより,製造原価等入札者の持つ入札行動に係る内部情報(私的情報)を推計する手法について整理した。また,必要なデータを収集して実証分析を行った結果,理論の予測の通りの推計結果が出た。なお本研究は25年5月に行われる国際産業組織論学会において,発表することが許可された。 また、24年8月には、本事業に関連するワークショップを大阪大学社会経済研究所において開催し、理論的・実証的な論点の整理や研究成果の報告、および他の経済学者・法学者・実務家とともに活発な意見交換・討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画における理論研究の目的は、「除算方式総合評価入札」のみならずさらに一般的な評価方法に適用可能なフレームワークの提示および基礎的分析が行われたという点で、十分に達成され、研究成果も論文としてまとめられた。 実証研究については、国土交通省発注の公共工事の入札結果データの収集を行い,テキストデータに変換しつつ実証分析のためのクリーニングを行った.また,理論分析を進める上で焦点となる様々な仮定(独立性や対称性のほかに、入札者の費用関数の形状等、総合評価入札独自のものも含む)は,構造推定上,逆に識別性を高めることになることが確認された。推計結果は理論モデルの構築にフィードバックされ、より応用可能性の高い一般的な入札モデルを構築することに貢献した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度はおおむね順調に研究が進展したことを踏まえ、今後も交付申請書に記載した研究実施計画に従って、理論研究、実証研究を進める。セミナー・ワークショップ開催・ヒアリングを通じて、関連分野の他の専門家との意見交換を活発に行い、本事業の研究の発展および研究成果の幅広い層への周知に努める。また,平成24年度に引き続き,国際学会においての発表の機会を獲得することを目指し,本研究成果の発信および研究成果のフィードバックを得ることを通じて,研究をより充実したものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は計算機購入と資料整理のアルバイトについて計画通りの支出を行わなかったために残金が発生した。今後計算機や24年度計画分の資料整理の必要が発生する可能性が高いため、25年度はこれらの支出に備え、当初の支出計画をその分変更する。また,平成24年度中に開催したワークショップは大阪大学社会経済研究所共同利用・共同拠点プロジェクトとの共催という形式になったことから,当該ワークショップへの討論者および招へい研究者ための旅費・謝金の支払いを折半した結果,当初本事業単独での開催見込みで計上したワークショップのための予算が一部残金として発生した。残金は25年度以降に行うワークショップ開催費用に引き当てる予定である。
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