研究課題/領域番号 |
24530195
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花薗 誠 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60362406)
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研究分担者 |
中林 純 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (30565792)
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キーワード | 総合評価方式入札 / ゲーム理論 / 均衡分析 / 構造推定 / オークションデータ |
研究概要 |
理論的研究については、基礎的な内容について議論を補強するとともに、その作業を通じて平成25年度の研究計画として挙げられていた「入札上限価格」「品質の下限制約」等の現実的制約が、現在の枠組みの中で整合的に議論できることを導いた。前年度までの研究を報告する中で、一般的な総合評価ルールの下での入札行動をゲーム理論的に分析する際に、分析の基礎となる「ゲームの均衡状態の存在」に関し微妙な問題があることが認識された。そこで、均衡の存在の条件について、非線形微分方程式の解の存在条件等を詳細に検討した。これまでの条件に補助的な弱い仮定を加えることで存在の問題はクリアされ、同時に上記の現実的制約を加味しても、議論に問題が生じないことが確認された。この研究成果は前年度にまとめた「Procurement Auctions with General Price-Quality Evaluation」の中に統合され、現在再度投稿する準備を進めている。 実証研究については、構造モデルについて、理論的研究において再整理された均衡の存在証明に必要となる諸条件を踏まえて、再度モデルが成立することを確認した。また理論的研究と表記上の統一をはかりつつ、研究成果を「Structural Estimation of the Scoring Auction Model」に取りまとめた。研究成果は昨年度大学でのセミナーおよび産業組織論に関する国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
入札制度の評価や制度設計について研究を進める予定であったが、理論研究ではその前段階の基礎的な研究に重要な課題が見つかったため、その解決に注力せざるを得なかった。しかしながらその結果、研究の基礎的部分が強化されたとともに、研究計画であげられていた現実的な制約についての議論もある程度進めることができたといえる。25年度研究計画に挙げていた加算方式と除算方式の比較についても検討を行ったが、比較の基準として考慮するべき発注者の利得の構造を、どのように設定するべきかについての問題の解決に困難があり、十分に研究が進まなかった。 実証研究については、理論モデルにおける均衡の存在証明に十分な時間を要したこと、そして構造推定モデルが理論モデルの均衡に依存することから、研究の進捗状況は相応となっているところである。しかしながら、均衡の存在については推定の枠組みや実証分析結果結果には影響を与えないことから、研究成果については、均衡の存在証明に依存する箇所は必要に応じて今後修正を加えることを前提に、当初予定されていたスケジュールどおりに、ディスカッションペーパーとして発表する方針である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度、理論面では想定に比べて基礎的な研究となったため、26年度はこの基礎をもとに応用・政策につながる形の研究の比重を高めていく。加算方式と除算方式の比較やその他の形の総合評価の望ましさや、諸々の現実的制約がどのようにパフォーマンスに影響を与えるかについて、具体的な結果を導くために研究を進める。 実証面では、研究成果をとりまとめた論文「Structural Estimation of the Scoring Auction Model」を経済産業研究所(RIETI)で6月に発表し、審査を経た上で、RIETIディスカッションペーパーとして発表する。また、当該論文を経済学の専門学術雑誌に投稿する。また、各種のセミナーを通じて、引き続きフィードバックを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究所属機関の変更があり、出張旅費の計算上、使用金額に変化が生じたことによる残額である。 26年度、人件費・謝金として使用する予定である。
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