最終年度;理論研究では、第一に、価格制約を伴う総合評価入札が、上限・下限制約に限らず、等号制約を含んだより一般の価格制約に拡張可能なことから、「固定価格最高品質調達(fixed price best performance procurement)」や「単位価格入札(unit price auction)」との関係を明らかにした。第二に、一位評価入札の均衡分析において重要な「分離条件(sorting condition)」を満たすための、モデルの基礎要素(評価ルールや費用関数)に関する十分条件を導いた。第三に、入札者のタイプ情報の集約法(「擬タイプ(pseudotype)」)を一般化し、擬タイプは関数形を取ることを発見し、その構造について解明した。以上の点は論文“Procurement Auctions with General Price-Quality Evaluation”の改訂版に新たな論点として追加された。実証分析では、論文“Structural Estimation of Scoring Auctions”の専門雑誌への投稿によるフィードバックから、入札者の多次元の私的情報をデータより識別する問題を再考した。多次元私的情報を扱う理論モデルを検討し、実証分析において多次元のまま識別可能となる拡張に関する検討を行った。加えて、公共事業の入札データを用いた実証分析について、拡張した理論モデルのもとで政策分析を行った。 研究期間全体を通じ、総合評価方式の入札についての原理的な理解が深まり、分析可能な範囲を大きく拡大したとともに、これまでの研究を統合する一定の枠組みを完成させたといえ、今後の理論・実証研究の発展に寄与できると思われる。また実証研究においても、国交省の公共工事における入札行動を定量的に分析し、成果があった。
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