これまでのメカニズムデザインの文献においては,メカニズム設計者が完全なコミットメント能力を有し,事前に提示したメカニズムがどのように複雑なものであったとしてもそれに対して完全にコミットすることができると想定していた.しかし,メカニズムが時間をおって進行する動学的な構造を持つ場合には,情報が次第に明らかになるために,メカニズムの途中の段階で異なるメカニズムに移行するインセンティブが生じるという時間非整合性の問題が生じる.こうした問題に対応するために,本研究では,制度の設計者が不完全なコミットメント能力しか持たない状況を考察し,コミットメントの欠如が均衡および厚生に与える影響を分析した.
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