本研究は観測費用を伴う繰り返しゲームにおける評判効果に関する経済実験研究であり、理論を構築し、理論の正しさを実験で確認するものである。理論モデルについては概ね完成している。実験で理論の正しさを検証することを想定し、通常の理論分析では意思決定主体には完全な合理性が備わっていると想定されているものを本研究では、意思決定主体の合理性を若干制限した状況を分析した。つまり、意思決定主体は過去のすべての情報を考慮して、意思決定するのではなく、直近の過去の情報のみを利用して意思決定するものと想定して、均衡を導出した。意思決定主体にある特定の行動にコミットメントする可能性がある場合、どのような行動にコミットする可能性がある場合に評判効果が生じるのかを明らかにしている。文献レビューや関連分野の研究者と意見交換を行いつつ、実験設計の精緻化を行った。また実験用のウェブ・プログラムの改善も行った。また、本理論モデルを応用した理論研究も日野喜文氏(神戸大学大学院)と共同研究を行った。観測費用を伴う繰り返しゲームでは観測費用を支払って他の意思決定主体が保有している情報を獲得するというものであるが、その逆の場合を考え、ある意思決定主体が費用を支払って他の意思決定主体が獲得する情報を操作するという状況を分析した。これはステルス・マーケティングを行うような状況はひとつの例として挙げられる。この研究論文は国民経済雑誌に掲載された。
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