本研究は観測費用のある繰り返しゲームに関する研究であり、理論研究と実験研究からなる。囚人のジレンマの無限回繰り返しゲームに関する研究であり、各期にプレーヤーが選択した行動を観測するために費用を支払わなければならないという状況を分析している。本年度は主に理論研究を進め、論文の執筆を進めた。この研究者2016年8月に同志社大学で開催されたAsia Meeting of the Econometric Societyで研究発表を行った。発表は共著者の日野喜文氏が行った。関連分野の様々な研究者から有益なコメントを頂くことができた。さらに結果をより充実させるために、拡張したモデルについても分析を行い、分析を完了させている。 また、本研究を進める中で新しい研究も派生した。観測費用モデルをチープトーク・ゲームに応用した。意思決定者と情報保有者の間の情報伝達に関する研究であり、情報保有者は意思決定に必要な情報を知っているが意思決定者はその情報を知らないという状況である。意思決定者が情報収集をすることができない状況では無意味な情報伝達のみが均衡となるが、意思決定者が費用をかけることによって情報に関する不完全なシグナルを得ることができる場合にはコミュニケーションが改善されることを明らかにした。この研究は論文にまとめられ、定兼仁氏との共著で「情報獲得と情報伝達に関する分析」というタイトルで代表者が所属する大学の紀要である『国民経済雑誌』に発表した。
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