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2012 年度 実施状況報告書

国家統治と市場構造における腐敗・汚職の経済分析

研究課題

研究課題/領域番号 24530201
研究種目

基盤研究(C)

研究機関麗澤大学

研究代表者

溝口 哲郎  麗澤大学, 経済学部, 助教 (40566890)

研究分担者 齋藤 雅元  麗澤大学, 経済学部, 助教 (80434215)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード腐敗 / 国家統治 / 汚職 / 賄賂 / 移行経済 / 効率性
研究概要

政府当局は許認可権に対する裁量権を保有しているため,許認可権を必要とする民間部門からの贈賄は,とりわけ開発途上国において,腐敗による市場の歪みをもたらす可能性がある。本研究では引き続き,腐敗の要因を解明するための基礎モデルを構築する。まず腐敗・汚職が市場メカニズムの効率性を歪め,経済厚生の損失をもたらす要因を経済モデルより分析し,その結果を踏まえた上で規範的な腐敗防止策を提言する。
本年度は,研究計画書にあるように汚職と市場の関係性を分析するための土台となる事例分析のための文献および理論分析に必要な各種理論ツールのための基礎文献書を中心に購入し,「発展途上国における権益分配に関するメカニズムの研究」および「腐敗・汚職および企業の所有と経営の分離を考慮した寡占市場分析」の経済モデルの構築およびその基礎づけを行った。発展途上国における権益分配に関するメカニズムの研究では,Bribery Prevention and Efficiency Wageという発表を行った。企業家が新規参入の許可を得るために,賄賂を支払うという相互取引モデルの設定のもと,効率賃金による賄賂防止効果を比較静学分析した。結果,十分な賃金水準によって賄賂が減少することを示した。
腐敗・汚職および企業の所有と経営の分離を考慮した寡占市場分析として,汚職と需要曲線の関係を指摘したShleifer and Vishny (1993)(以下SV)論文の再考を行った。SVでは,すべての財が政府の管轄のもとで市場供給されるケースを想定しているが,我々は一部の財のみが政府により供給されているという設定のもと,SVモデルの拡張を試みた。現在,特定化された環境における賄賂を伴うSV流の需要関数の導出,および賄賂を伴う需要関数に基づいた新たなクールノー競争・ベルトラン競争の分析に取り掛かっている状況にある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は,汚職と市場の関係性を分析するための土台となる腐敗・汚職の事例分析のための文献を入手し,その分類・類型化をおこなった。腐敗・汚職が市場に与えるインパクトについて,実証および経済理論の立場から過去にどのような研究があるのかを調査することができた。また腐敗・汚職の経済理論モデルの構築およびその分析に必要な基礎文献書を中心に購入し,現在我々が構築している経済モデルをより充実・深化させるために役立てることができた。
具体的には,「発展途上国における権益分配に関するメカニズムの研究」および「腐敗・汚職および企業の所有と経営の分離を考慮した寡占市場分析」の経済モデルの構築およびその基礎づけを行った。具体的な成果としては,企業家が新規参入の許可を得るために,賄賂を支払うという相互取引モデルの設定のもと,効率賃金による賄賂防止効果を分析したBribery Prevention and Efficiency Wageというタイトルの論文をWestern Economic Association International (WEAI)における報告をおこなった。このことを踏まえ,我々は「おおむね順調に進展している」という自己評価の判断を下した。

今後の研究の推進方策

平成24年度で行っていた腐敗・汚職の経済モデルを評価・分析するため,ミクロレベルでの腐敗の問題とマクロレベルでの腐敗の問題について考察を深め,これらの考察とモデル分析を接合させる。腐敗・汚職が高いと認識されている国々においては,逆に腐敗・汚職行為によって経済的効率性が高まる状況もあり,その発生メカニズムについては分析が十分であるといえない。そのため今後はミクロレベルとマクロレベルでの腐敗の問題を効率性および経済厚生の観点から見直し,経済厚生を高めるための政策提言につなげる予定である。
特に腐敗・汚職が存在する状況下における官僚制度の効率性,公益事業における規制主体(政府)と被規制主体(企業)の関係,また腐敗・汚職の一形態である民間企業による国家簒奪などの事象について,これまで先行研究では行われてこなかった政治・経済の視野を念頭に入れた上で,一国経済の経済厚生を考慮にいれた経済モデルを構築・分析する。そして,これまでの研究成果を踏まえた上で,経済厚生の観点から理想的な組織・制度形態についての研究を進める。
また引き続き,地下経済と腐敗・汚職の関係について分析を試みる,ここで地下経済とは国家によって法的に認められていない市場のことであり,「市場の失敗」の一形態である。地下経済には国家による法的な権限の裏付けが伴わないため,不安定な市場形態となり,腐敗・汚職行為が横行している。本研究では,人々が腐敗・汚職を通じて合法的な市場ではなく地下経済を利用する理論的理由の解明,および腐敗・汚職の関係を考慮した上での地下経済の形成メカニズムに関する経済モデルの構築を試みる。

次年度の研究費の使用計画

本研究を行うための機器類として,高性能な数値計算ソフトであるマセマティカほかを利用するため,計算力を確保するためのハイスペックなノートパソコンがそれぞれに必要である。平成24年度に購入予定だったが,Windows8の販売およびその普及のため,今年度に購入し,利用予定である。
引き続き,最新の研究動向や具体的事例,学際的な知識が本研究では欠かせないため,それに見合う十分な書籍代が必要であり,そのための経費を計上している。また本研究の成果は,国内外でのセミナーや学会発表を予定しており,旅費としてその費用を計上している。そして,本研究の成果は海外専門査読雑誌への投稿を予定しているため,英文校正も不可欠であるため,そのための費用も引き続き計上し,適切に利用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Bribery Prevention and Efficiency Wage

    • 著者名/発表者名
      Tetsuro Mizoguchi
    • 学会等名
      10th Biennial Pacific Rim Conference, Western Economic Association International
    • 発表場所
      Keio University

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公開日: 2014-07-24  

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