研究課題/領域番号 |
24530202
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松本 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (50149473)
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キーワード | 限定合理性 / 動学的独占 / 固定遅延 / 連続分布遅延 / 連続時間モデル / 離散時間モデル |
研究概要 |
教科書的な独占理論は完全情報を前提としているので、利潤最大化を実現する価格および生産量は決定できる。完全情報の過程を緩和し、独占者は必ずしも需要曲線の全容はは分からず、市場を通じての情報は時間遅れを伴い習得できるような状況を想定する。 1.独占者は線形逆需要関数の傾きを知っているが、最大価格は分からない。 2.価格情報は一定の時間を伴って習得できる。 という状況で、最大価格を市場情報を使いながら学習を行う動学過程を分析する。学習がうまくいけば最終的に真の最大価格に到達することができる。 時間遅延を連続分布ラグにより記述した場合は過去の情報をすべて使うことになる。二つのケースに分けて分析。ひとつはラグがひとつの場合である。勾配法により学習過程を定式化することで、(1) 学習過程の安定性は分布の形状に強く依存する;(2)臨界的なラグの大きさがあり、それ以下のラグであれば、システムは安定するが、それ以上になるとシステムは不安定化し、ホップ分岐により周期的な解が出現することが示された。ついでラグが二つある場合に議論を拡張した。二つのラグが分布の形は異なるが、連続的に分布している場合とひとつは連続分布ラグもう一つは固定的なラグをもつような性格の異なるラグが共存する場合に二つに分けて考察。ひとつのラグが存在する場合と異なる動学が生み出されることが示された。ひとつは安定―》不安定のプロセスが繰り返し現れること他はカオスを含む複雑な動学が発現することである。 さらにラグが固定的な場合に考察を進めている。ひとつの固定ラグはすでに確立した理論があるが、二つの固定ラグの場合には理論が確立しておらず、分析は困難を伴う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初時間遅延を含む独占理論の動学化の後に時間遅延を含む寡占理論の動学化を計画していたが、独占理論動学化に予想以上の展開ができ、時間がかかっている(まだ未刊行のDPを含めればこの独占理論だけで10本以上の論文を作成している)。2014年度は寡占理論まで議論を拡張する予定である。マクロ経済への応用は順調に進んでいる部分もある。連続時間の新古典派成長理論に固定遅延がある場合には複雑な動学が生み出されることは示したが、二部門経済成長モデル、最適成長モデルへの拡張はまだ行われていない。経済政策の応用(金融財政政策)に関してはおおむね順調に分析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ミクロ動学にかんしては、独占動学理論のさらなる拡充。その後伝統的な寡占理論に時間遅延を導入し、連続時間モデルを構築し、多次元モデルにおける遅延の及ぼす影響について分析を深める。 2)マクロ動学は古典的なマクロモデル(グッドウィウィン乗数加速度モデル、カルドア‐カレツキ―の資本蓄積モデル)に遅延を明示的に導入し、モデルの再構築を図る。また、成長モデルに関しては生産関数がレオンチェフタイプの場合の分析は終わっているので、新古典派的な代替可能な生産関数の場合に議論を拡張する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年10月まで中央大学大学院経済学研究科委員長の任にあり、当初予定してたいくつかの活動が時間的な制約のために実行できずに、祖語が生じた PCを2台(デスクトップおよびノート)を購入予定。
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