研究課題/領域番号 |
24530208
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
清滝 ふみ 近畿大学, 経済学部, 教授 (30319751)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | チープトーク / 不完備情報 / チーム生産 / 提携形成 |
研究概要 |
今年度は、企業組織の形態がどのように従業員の交渉力に影響を与え人的資本投資のインセンティブを決定するかついての研究を完成させた。組織形態の選択は組織内部の情報収集、情報処理の観点からも重要である。本研究では従業員のインセンティブに与える影響に注目し研究を行った。そして水平的(Horizontal Organizations)、垂直的ヒエラルキー(Vertical Hierarchies)、ピラミッド型ヒエラルキー(Pyramidal Hierarchies)、逆ピラミッド型ヒエラルキー(Inverted Hierarchies)を比較することによりそれぞれの組織構造が最適となる人的資本投資の性質を明らかにした。この研究は査読付き雑誌に掲載された。 次に、チーム生産における事前のコミュニケーションの役割について分析した。エージェントの能力が異質である場合、行動を決定する前に、各エージェントが自分のタイプを告白するチープトークステージを設けることにより、常に怠けるのが最適となる低能力タイプが含まれていても、効率的な結果が正の確率で生じることが示された。その結果、フリーライド問題のために効率的な生産ができない状況においても、事前のコミュニケーションによりインセンティブ問題が緩和されることが明らかとなった。しかし、協力関係が実現するのは、高能力どうし、中間能力どうしが結果的にペアとなっている場合に限られており、能力の程度が異なるエージェントどうしがペアになった場合、パレート効率的な結果を達成できない。そこで、メッセージの回数や戦略の数を増やすことにより協力確率が増加するかどうか現在研究中である。この研究は、Birkbeck College, University of LondonでKen Hori氏らと議論を行い論文の改善に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の1点が査読付きの雑誌論文へ掲載された。 ``The Choice of Organizational Form under Intrafirm Bargaining Rules’’ (with Toshiji Miyakawa), Jornal of the Japanese and International Economies 26 369-392, 2012. しかし、メッセージの回数とエージェントのインセンティブについての理論分析が完成しておらず、論文完成に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
エージェントの動機付けに有効な情報伝達についての研究をさらに進展させ論文完成を目指す。 エージェント間、プリンシパルとエージェント間の情報伝達が提携形成や組織の意思決定に与える影響についての研究を開始する。 さらに、研究成果について国内外の研究者と議論をする機会を設けることで、論文の内容改善に努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
関数を特定化してより現実的なインプリケーションを導くため数値計算ソフトMathematicaを購入したい。また、日本国内外の学会や研究会に出席、報告を行うために旅費を計上する。また、投稿論文の英語表現の改善のために英文校正を行う。さらに、関連するゲーム理論・経済理論関係の論文の購読も行う。
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