研究実績の概要 |
本研究では、近年盛んに研究されているニューケインジアンの動学的確率的一般均衡モデルに、研究開発を基礎とした内生的技術成長を組み込んだ理論モデルを構築し、モデルに基づいた日本経済の短期的および中期的な経済変動の定量的な分析を行うことを目的としている。2014年度は2013年度につづき、理論モデルの構築とその実証検証を行った。主な研究実績は以下の2点である。 1つ目は、関西学院大学経済学部研究会、経済学論究第67巻第3号で2013年に発表した、「期待により生じる景気循環と研究開発」のモデルを修正・改良したモデルを構築した。重要な改良点としては、将来の生産性に関する複数期にまたがる期待ショック(ニュースショック)をモデルに組み込んだことがあげられる。これにより、現実的な形で期待が経済変動に与える影響の分析が可能となった。 2つ目の実績は、上記のモデルのベイズ推計を行い、期待ショックの影響を定量的に分析したことである。分析によると期待ショックは初期時点においては生産、消費、投資にほとんど影響を与えないが、中期的には正の影響を与えることが示された。これはこの分野の研究で著名なBarsky and Sims (2011)のVARの実証分析と一致するものである。Barsky and Sims (2011)が示したような結果をもたらす理論モデルはこれまで殆ど存在しておらず、重要な貢献となり得る。 現在は上記の結果を論文としてまとめる作業を行っている。なお、論文完成後に国内外で報告し、最終的に海外の著名な雑誌に投稿する予定である。
Barsky, Robert B. & Sims, Eric R., 2011. "News shocks and business cycles," Journal of Monetary Economics, vol. 58(3), pp. 273-289.
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