研究課題/領域番号 |
24530216
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 真司 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (50264817)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / LSE / ケンブリッジ学派 / マーシャル / ボウレイ / 統計学教育 |
研究概要 |
平成24年度は,アーサー・レオン・ボウレイ(Arthur Lyon Bowley, 1869-1957)の統計学・経済学方法論をとりあげ,アルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall, 1842-1924)の経済学の継承と展開を検討した。その成果は,平成24年9月に北海道大学で開催された経済社会学会全国大会で報告を行った。 本報告では次の3点が明らかになった。最初に,ボウレイはマーシャルの統計の考え方を継承し,LSEにおいて統計学教育を行った人物である。彼は統計学の役割と限界を踏まえ,経済学の発展に貢献した。ボウレイが数学者から経済統計学者へと転身を遂げた背景には,マーシャルの影響が大きい。マーシャルが必要性を感じながらも,自ら手をつけることができなかった統計学分野を開拓した。 第2に,ボウレイのLSEでの統計学教育に関しての貢献である。彼はLSEの開学当初から教育に携わり,その後,統計学講座の最初の教授職に就き統計学教育を行ったことが,その後の統計学教育の発展に大きく寄与した。マーシャルがケンブリッジで応用経済学分野の発展を望みながらできなかった学問分野がいち早くボウレイによってLSEで実現された。 第3に方法論に関してマーシャルとボウレイが共に社会改革という共通の目標を持ち,経済学における統計の重要性と経済統計学の発展の認識を共有していた。彼らは統計データの蒐集と整備の必要性を強調し,ボウレイはこの点に関して大いに貢献を行っている。両者の相違点は,マーシャルは帰納法が演繹法を一体のものと考えているのに対して,ボウレイがは帰納法と演繹法を分離するものと考えている点である。 経済学教育に関しては,さらに調査が必要なためLSEのアーカイブで平成25年2月に調査を行った。上記の報告をもとに,ワーキングペーパーを作成し,経済社会学会年報に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーシャルとボウレイの研究として,本年度はボウレイの方法論を中心に研究を行った。そこで,平成24年9月に北海道大学で開催された経済社会学会全国大会で「マーシャルとボウレイの統計学方法論」というタイトルの報告を行った。 報告でのコメントをもとに「アーサー・レオン・ボウレイの統計学方法論ーマーシャルの方法論の影響を中心にして」というタイトルのディスカッション・ペーパーを作成した。さらに,同タイトルの論文を経済社会学会年報に投稿を行った。 上記の論文に関しての経済学史学会(The History of Economic Thought Society of Australia )の報告のために,英文要旨等の関係資料を準備し申請を行った結果,平成25年7月にウエスタン・オーストラリア大学で開催される同学会で‘A Study of Methodology on Arthur Lyon Bowley’と言うタイトルでの報告が認められた。 ボウレイの統計学教育の問題に関して,平成25年2月にロンドン大学(London School of Economics)のアーカイブを訪問し,当時のLSEでの統計学教育の状況に関して調査を行った。調査の結果,彼はLSEの開学当初から教育に携わり,その後,統計学講座の最初の教授職に就き統計学教育を行ったことが,その後の統計学教育の発展に大きく寄与したことが明らかになった。LSEのアーカイブでの調査をもとに,平成25年度は,平成24年度の調査を踏まえ,(1)マーシャルの統計学・数学的方法論(2)ボウレイの著作の統計学方法(3)ボウレイの著作の書評の検討研究を進めていく行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,ウエスタン・オーストラリア大学で開催される経済学史学会(The History of Economic Thought Society of Australia)の報告原稿のための完成原稿のが6月初旬に求められているため,そのための原稿を準備する。 さらに,研究を次のように進めて,26年度の学会報告,論文作成の準備をする。 (1)マーシャルの統計学・数学的方法論の検討。マーシャルの統計学ならびに数学的方法論の再検討を行い,初期の論文である「統計のグラフ的方法」(1885)「一般物価の救済策」(1887)とその関係をまとめたと『貨幣信用貿易』を検討する。このことからマーシャルの統計学への考え方・統計学方法論を明らかにする。 (2)ボウレイの著作の統計学方法の検討。ボウレイの著作である『統計学要論』(1901),『統計学入門』(1910),『一般教養の純粋経済学』(1913),『経済学の数学的基礎』(1924)をもとに,ボウレイが社会科学とくに経済学への適応をどのように考えていたのかを明らかにする。ボウレイの最初の3冊の著作に対して,マーシャルが書評を寄せ直接ボウレイに手紙を書いて,自らの方法論について述べている。ボウレイはその後,それらの書物を改訂することになる。改訂の内容に関しても検討を行う。『経済学の数学的基礎』(1924)は,マーシャルの死後に出版された書籍である。最初の3冊との相違点に関しても考察を進めていく。 (3)ボウレイの著作の書評の検討。上記の著作に関して,サンガー,シュンペーター,ヴィクセルをはじめ多くの経済学者・統計学者が書評を寄せているので,これらも検討を行う。書評の研究により,当時の経済学者や統計学者がどう評価し受け入れていったのかということを明らかにすることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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