本研究は以下の三点を明らかにした。①ケンブリッジ大学(以下「C」)の経済学講義のモデルとなったエディンバラ大学(以下「E」)のそれは、仏革命期の反動的な空気によって条件付けられており、このことは、革命前のCで展開されていた経済論を含む道徳哲学が革命後直面した困難に相通じ、Cの大学人たちがEの経済学講義に関心を示した所以を説明する。②E出身のマカロクが1824年にロンドンで行った講義は、ブリテンの経済学「正統派」の形成を告げるものであり、こうした観点から、その後のCにおける「正統派」批判および初代教授の誕生が理解できる。③Cにおける「正統派」を巡る対立は、形を変えながら1840年以降も続く。
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