本研究の究極的な目的は、ケインズやベヴァリッジの経済思想を思量しながら、「公共目的と経済的効率性を両立させる体制(半自治組織)の条件」を考究することにある。「福祉国家の合意」「資本主義の黄金時代」という思想はどこから始まり、いつ終わり、そして現代にも意味があるのだろうか。これが申請者の根源的な問題意識である。 平成27年度は上記の究極的な目的に基づき、具体的には次のような研究を実施した。(1)2015.8.3から9.7まで、ロンドン・ケンブリッジ・マンチェスターに順次滞在し、特にLSE文書館でベヴァリッジ文庫の貴重一次資料を閲覧した。また国際学会に出席した。(2)2015.9.10-13に、小樽商科大学における第4回欧州~日本経済思想学会合同会議において、連邦主義に関する英語発表を実施した。(3)2016.2.1から3.10まで、カッシーノ大学(イタリア)に滞在し、共同研究者と十分な知見を交換した。 成果物としては、ライオネル・ロビンズ著『経済学の本質と意義』小峯敦・大槻忠史訳、京都大学学術出版会、220+viiiページ、2016年1月 を完成させたことである。LSEの中心人物として、ケインズとベヴァリッジを結びつけるロビンズを経済思想の面から考察することは、本研究から触発された重要な成果であった。
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