本研究の最大の成果は、ケンブリッジ大学中央図書館およびLSE文書館などにおいて、ケインズおよびベヴァリッジの原典(手紙・メモ・草稿を含む一次資料)を精査することを通じ、次の認識に至ったことである。すなわち、戦間期の巨大な知としての両人は、効率と公平を両立させる構想を推進しており、特にケインズにおけるその内実は、次のような複合的な組織を実現することであった。つまり、公共心を持った大規模経営者、真性な長期期待に基づく投資家、公平無私な政策担当者、専門的知を持った経済助言官、適切な経済情報を流す公共メディアという複合体である。 この複合体こそ、彼らの言葉に即した「投資の社会化」の実態である。
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