研究課題/領域番号 |
24530222
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西埜 晴久 千葉大学, 法経学部, 准教授 (20305410)
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研究分担者 |
各務 和彦 千葉大学, 法経学部, 准教授 (00456005)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 所得分布 |
研究概要 |
本年度は昨年度までに投稿していた研究である所得分布の分位データに対し,漸近正規近似を行うことで,SVモデルへと拡張し、家計調査のデータを用いて実証した研究を"Bayesian estimation of persistent income inequality by lognormal stochastic volatility model,"の論文として国際的学術誌であるJournal of Income Distributionにおいて掲載をみた。本研究において1960年台末から得られる家計調査の5分位データを用いて、所得格差を示すパラメータにAR1の構造を入れることが可能になり、所得格差に対する持続性を示すことができた。 また、3つ以上のパラメータを持つ分布についてそのジニ係数などの性質および最尤推定について研究した。特に第2種の一般化ベータ分布および一般化ベータ分布が多くの種類の所得分布を含むので有用であることが分かったが、実際の最尤推定にあたっては初期値の選び方などに難点があることが示された。これらの結果は統計関連学会連合大会において報告を行い、その内容をもとに千葉大学経済研究に掲載した。 さらには、3つ以上のパラメータをもつ代表的な分布である一般化ベータ分布をベイズ的に推定する方法について研究を行い, European Seminar on Bayesian Econometrics (ESOBE2012), Computational and Financial Econometrics(CFE2012)などで報告を行っている。報告のたび毎に研究が進展している。特に、一般化ベータ分布のようにパラメータ数の多い複雑な分布に対しては最尤法の推定が不安定であるのに対し、MCMC法を用いたベイズ法ならば繰り返しの数を非常に多くすることで安定的に推定が可能だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで投稿していた論文が"Bayesian estimation of persistent income inequality by lognormal stochastic volatility model,"として国際的学術誌であるJournal of Income Distributionに掲載された。本研究は経済不平等度を含む時系列モデルとして基礎的なモデルとして構築された。本モデルは今後の不平等度の研究において、不平等度を含む時系列モデルのリファレンスモデルとなることが期待される。 さらに、多くの種類の所得分布を含む分布である第2種の一般化ベータ分布および一般化ベータ分布については、最尤法による推定とMCMC法を用いたベイズ推定の研究を行った。これらの研究について研究報告を行い、また一部は千葉大学経済研究に発表された。こうした分布はパラメータ数の多い複雑な分布であり、推定には難しさがあり、実用にはあまり至っていないことから、本研究によりこのような分布の推定法に関して開発が進んだと判断している。 また、2012年7月に千葉大学において6th Japanese-European Bayesian Econometrics and Statistics Meetingを開催した。この国際研究集会は海外の有力研究者および国内の研究者によって英語により研究報告を行った。こうした研究上のアイデアを国際的に交換する場所を設けることを通じて、今後の研究に資するものになったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一般化ベータ分布を含むパラメータ数の多い分布について、最尤推定法の可能性をさぐり、また、MCMC法によるベイズ推定がどこまで可能かを研究する。特に、最尤推定法およびMCMC法によるベイズ推定がどのように有用に推定できているかについて、解析的な手法をに基づいた理論研究およびシミュレーションを利用した研究の双方の立場から追究していくことを考えている。そして、一般化ベータ分布についてはジニ係数の表現は陽表的に与えられていないので、解析的あるいは数値的にジニ係数を計算する方法を研究する予定である。さらには、一般化ベータ分布以外にパラメータ数が3つ以上の分布で、所得分布に用いることが可能な分布を検討することを計画している。 また、分位点から漸近正規近似することで線形化した時系列モデルのさらなる発展を考えている。時系列モデルに対して、不平等度の変動要因を取り入れることが一つの発展の方向と考えられよう。他にも、AR1以外の時系列モデルを考えることも研究の方向と考えている。他には、所得分布の推定にあたっては、不平等度の分解といった問題があるが、パラメトリックな分布を仮定した場合の不平等度の分解についての研究も検討している。 なお、これらの研究遂行にあたって必要な書籍を整え、また計算機環境およびデータ類を準備する必要がある。また、最終的には海外の学術誌に掲載することを目指しているので、海外の学会および研究会での報告を行うための旅費も必要となる。その他、データを整理する用務のための人件費などが必要と計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に際しては、研究に関する書籍および実際に計算を行うための計算機、そして実証研究に用いるデータ類が必要となるので、書籍および計算機関連の物品費として40万円を予定している。次に、研究報告のために国内外の研究会および学会に参加するために必要な旅費として50万円を予定する。そして、用務を頼む場合の人件費として10万円、その他に論文の英文校正の費用などとして20万円を予定している。
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