研究課題/領域番号 |
24530222
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西埜 晴久 千葉大学, 法経学部, 准教授 (20305410)
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研究分担者 |
各務 和彦 千葉大学, 法経学部, 准教授 (00456005)
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キーワード | 所得分布 / ジニ係数 / 一般化ベータ分布 / MCMC法 |
研究概要 |
本年度の研究成果として、具体的には以下の2つの内容となる。 1)5つのパラメータをもつ一般化ベータ分布を用いた所得分布の推定の研究を行った。 この一般化ベータ分布は第1種の一般化ベータ分布および第2種のベータ分布、さらには、Singh-Maddala分布、ガンマ分布といった所得分布の推定に用いられる分布を広範に含む重要な分布である。しかしながら、パラメータの数が5つと多いことから通常の最尤推定では、推定値が不安定になり、また、初期値の選び方も難しかった。そこで、シミュレーションによって事後分布を求めるベイズ的なMCMC法による推定法を開発することで、パラメータ数の多い分布においても適用できる推定法を開発した。また、一般化ベータ分布およびそれに含まれる種々の分布のジニ係数を数値計算も利用して計算を行った。 2)不平等度を表現する対数正規分布を仮定したもとでの確率的ボラティリティモデル に対して、不平等度を表すパラメータの変化にランダムウォーク型を仮定した場合のモデルおよび定常性を仮定した場合のモデルを推定して、2つのモデルの比較を行った。日本の家計調査のデータを用いてモデル比較を行った結果、ランダムウォーク型のモデルよりも定常性を仮定したモデルが選ばれることが分かった。 これらの研究は、MCMC法といった計算機インテンシブな方法を用いることで、所得分布を精緻にモデル化し、また時系列へと拡張するためのモデルを与えている。したがって、現在関心を集めている所得分布を精緻に分析するために有用な手法を提供していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般化ベータ分布といった5つのパラメータを持つ複雑な分布に際しても、ベイズ流のMCMC法のよる計算法が提案でき、また、不平等度を表すパラメータがランダムウォーク型をの振る舞いをするモデルについても推定ができたので、研究の目的はおおまかに達成されていると考えている。一方、まだ、投稿論文として完成されていないので、それは急務の課題であろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究成果のうちまだ論文として出来上がっていないものがあるので、早急に論文として完成させて学術誌に投稿する。また、今後の研究課題としては、一般化ベータ分布に含まれる種々の分布の関係およびその他の4つ以上のパラメータを含む分布の性質およびそのジニ係数の数値的な導出は、それらの分布の推定と組み合わせて、より深く調べる必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文投稿が予定より遅れており、英文校正等の費用を確保する必要があったためと、学会報告のための旅費を次年度に多めに確保するためである。 英文校正の費用および旅費に充当する予定である。
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