研究課題/領域番号 |
24530224
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
田中 勝人 学習院大学, 経済学部, 教授 (40126595)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Fractional O-U process / 非エルゴード性 / 最尤推定量 / ギルサノフの定理 / 数値積分 / 極限分布 |
研究実績の概要 |
長期記憶性をもつ連続時間モデルである fO-U 過程(fractional Ornstein-Uhlenbeck process)に含まれるドリフト・パラメータの最尤推定問題を引き続き考察した.前年度までは,定常的な性質をもつエルゴード的な状況での推定を考察したが,本年度は非定常,非エルゴード的な場合の最尤推定量の分布を導出し,その密度関数を数値計算して,グラフに表した.さらに,標本区間が無限大になる場合の漸近分布を導出した.エルゴード的な場合の漸近分布が正規分布でハースト指数 H に依存しないのに対して,非エルゴード的な場合には,コーシー分布で H に依存すること,そして,分布は H=1/2 に関して対称で,1/2 から離れるに従って分布の集中度が高まることを見出した.そして,最尤推定量は最小2乗推定量よりも集中確率が高いことが確認された.また,分布計算の副産物として,さまざまな H の値と標本期間を与えた上で,推定量のモーメント(平均と分散)を計算して,推定量に与える H と標本期間の影響を考察した. さらに,fO-U 過程における検定問題を扱って,検出力を計算した.この検定問題は,離散時間モデルでは単位根検定として考えられるもので,その連続時間,長期記憶過程への拡張である.その結果,エルゴード的な場合よりも,検出力は非常に高いことが見出された.その理由としては,対立分布が指数的なオーダーで帰無分布から離れることが挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は,当該分野の国際的な学術誌(Statistical Inference for Stochastic Processes)に発表することができた.また,フランスおよびオーストラリアの大学において,研究成果を発表する機会を得た,さらに確率過程の研究者と交流して,意見交換ができ,有意義な研究ができた.
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今後の研究の推進方策 |
今まで行ってきた fO-U モデルの推定では,ハースト指数 H が既知であることを仮定している.未知の場合の推定は,非常に難しい理論的な問題を含んでいるが,重要な問題であるので,取り組んで行きたい.その場合,H が既知の場合の理論的な結果を有効に利用して,意味のある結果を見出して行きたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の学会で発表する計画を立てていたが,本務との関係で都合が合わなかった. また,購入を予定していた書物の出版時期が遅れたために,購入ができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
海外の学会あるいはセミナーで研究成果を発表するための費用.および,図書の購入.
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