研究概要 |
本研究では、オンライン観測される時系列の非定常性についての検定と変化点問題を考え、停止時刻を用いて推測をおこなう統計的逐次解析の手法を開発する。特に、自己回帰過程を考え、観測されたフィッシャー情報量により停止時刻を定義し、非定常性に関するパラメトリックおよびセミパラメトリックな統計的逐次検定と変化点探索の手法を開発する。それは、時系列の非定常性の検定についてもっとも広く使われているDickey=Fuller検定、Augmented Dickey=Fuller検定、Phillipsのセミパラメトリック単位根検定に相当するものを統計的逐次解析の分野に創出することに他ならない。 本年度は Phillips, P.C.B. (1987), "Time Series Regression with a Unit Root", Econometrica,Vol. 55, No. 2, pp. 277-301.で提案されたセミパラメトリックARモデルの単位根検定にたいしその逐次検定の方法を確立した。"Semiparametric Sequential Unit Root Test"と題する論文を京都大学経済研究所の西山慶彦氏と京都工芸繊維大学の人見光太郎氏との共著で執筆し、弱従属的誤差項を持つAR(1)過程(それは独立的誤差項を持つAR(p)過程を含む)についての逐次的単位根検定の手法を解明した。論文の第一の成果は、局所対立仮説のもとでの検定統計量の漸近正規性だけでなく、自己回帰パラメータが局所パラメータ(爆発的な場合を含む)を持つ場合にも検定統計量の漸近正規性が得られた点にある。また第二の成果は停止時刻は漸近的的にドリフト付きのベッセル過程で表され、そのモーメントが特殊関数により計算可能となる点にある。
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今後の研究の推進方策 |
非定常性の逐次検定の方法を Chan, N. H. and Wei, C. Z. (1988). Limiting distributions of least squares estimates of unstable autoregressive processes. Ann. Statist. 16 367-401. で理論的基礎が与えられたAR(p)のAugmented DF検定に相当するものに拡張することを考える。この分野のもっとも重要な貢献をした香港中文大学のChan教授の下で研究報告・研究打ち合わせを行う予定である。
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