本研究は、日本における数理統計学の定着と、応用分野への普及について、その経緯を文献資料と関係者の証言から構成し、明らかにすることを目的としたものである。まず連携研究者との打ち合わせを9月7日(岡山)、3月3日(神戸)の2回開催し、研究進行上の協議や状況報告を行った。 インタビュー調査については、以前に実施したインタビューの編集作業を引き続き行った。新たなインタビューについては、対象者の関係者を通じて折衝を行い、平成27年度中に1件実施する予定であったが、対象者の体調不良のため、延期することになり、研究期間中に実施することはできなかった。 文献調査については、1920~30年代に文部省在外研究員としてイギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのK. Pearsonの研究室に滞在した5名の日本人統計学者の実態調査を平成25年度、26年度に引き続き行った。平成27年度は、同図書館およびロンドン大学図書館等に海外出張して、不足分を補充する文献調査を行うとともに、カリキュラムの改正や学位の審査など当時の教育・研究内容に関する一次資料(Minute of the board of studies in statistics 等)による文献調査を行った。また、1920年代にK. Pearson研究室に留学した日本人心理学者の門下生の一人にインタビューを行い、1945年~1950年代頃の日米心理学研究における統計学の位置付けについての情報を得た。 本研究のうち文献調査に関わる成果の一部を、2015年度統計関連学会連合大会(2015年9月開催)および2015年関西計量経済学研究会(2016年1月開催)において発表した。また、本研究の目的でもある、海外から移入した「科学」の定着と変容に関する研究の一部を第9回システム科学国際シンポジウム(2017年3月開催)において発表した。
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