研究課題/領域番号 |
24530231
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
村田 啓子 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90526443)
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キーワード | 退職・消費パズル / 恒常所得ーライフサイクル仮説 / 遺産・相続 / 格差 / 日本 |
研究概要 |
1.データベース作成作業 総務省「家計調査」のパネルデータ化及び旧貯蓄動向調査についても個票レベルでのマッチング作業を実施した上で、資産データ等の精査を行った。 2.実証的研究 1)退職消費パズルの検証:前年度に引き続き恒常所得―ライフサイクル仮説の検証の一環として、相当規模程度の予期した所得の変動事例として、退職時における所得低下が消費に及ぼす影響(retirement consumption puzzle)の検証を行い、日本経済学会で発表した後、ディスカッションペーパーとして公表した。本研究は、農業経営統計(退職一時金や資産の情報も含有)を用い、第2種兼業農家に着目することにより中長期に及ぶパネル・データを用いて行った点に特徴がある。分析の結果、①Unayama & Stephen(2012)による先行研究と異なり、退職時の所得の大幅減により消費は減少し、かつ所得減が大きいと消費減少が大きくなる傾向がみられる、②しかし、その内容はWakabayashi(2008)が強調していた世帯員構成の変化のみでは十分説明できない、③資産蓄積の少ない世帯で消費減少が大きくなる傾向があり、その背景として、少なくとも一部は、予期せぬ退職に起因する可能性がある、という新たな貢献が得られた。 2)我が国世帯における世代間移転と資産格差:内閣府経済社会総合研究所において2010年に実施したアンケート調査の個票を用いて、資産移転の受取額と受取世帯の経済力の関係を定量的に推定し、英文雑誌より公表した。世帯主の年間収入の大きい世帯ほど親からより多くの資産移転を受けており,世代間移転により格差は拡大の恐れがある。しかし、世帯の経済力をライフサイクル資産額で測ると、格差拡大の量的効果は限定的であることが示唆された。また、本課題と関連して引き続き遺産・相続に関する実証研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.退職消費パズルの研究については、当初予定通り昨年度の成果を踏まえさらに検討を行った上、学会発表の後ディスカッションペーパーとして公表した。 2.世代間移転と資産格差の研究成果の一部が学術雑誌に掲載されたほか、本課題と関連して遺産・相続に関する実証研究を進めた。 3.並行して、その他研究課題についても準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
1.退職消費パズルの研究については、論文を学術雑誌に投稿し、必要な場合はさらなる検討を行う。 2.遺産・相続について引き続き研究を進める。 3.並行して、その他研究課題についても分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究打ち合わせや意見交換、学会発表などを東京近郊で行うことが可能となったこと、英文校閲などを共著者の予算等で拠出可能となったこと等により旅費、人件費、謝金などが節約できたため。 研究成果を高めるためのソフトウエア等物品の購入、学会発表や打ち合わせの旅費、人件費などに充当する予定である。
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