1.データベース作成等:農業経営統計」(1995~2003年)」個票によりパネルデータを新たに構築した。当初受領した個票には世帯特定に用いる情報(ID変数)に重複等の問題もみられたことから、同省の統計担当者とも情報交換をしつつデータを整理・精査し、原データをもとにパネル・データを作成するプログラムも作成した。 2.実証的研究 1)退職-消費パズルの検証:恒常所得―ライフサイクル仮説検証の一環として、相当規模程度の予期した所得の変動事例として、退職時における所得減が消費に及ぼす影響(retirement consumption puzzle)の検証を行い、各種学会で報告した後ディッションペーパーで公表した。分析の結果、①Stephen and Unayama (2012)と異なり、退職時の所得の大幅減により消費支出は減少し、かつ所得減が大きいと支出減少が大きくなる傾向がみられる、②その内容はWakabayashi(2008)が強調していた世帯員構成の変化では十分説明できない、③資産蓄積の少ない世帯で消費減少が大きくなる傾向があり、その背景として少なくとも一部は予期せぬ退職に起因する可能性がある。その後得られたコメント等を踏まえ改訂作業を行った。 2)我が国世帯における世代間移転と資産格差:内閣府経済社会総合研究所において実施したアンケート調査の個票を用いて、資産移転の受取額と受領世帯の経済力の関係を定量的に測定し、学術雑誌で公表した。世帯主の年間収入の大きい世帯ほど親からより多くの資産移転を受けており、世代間移転により格差は拡大の恐れがあるがその規模は大きくない。また、本課題と関連して遺産・相続に関する実証研究を進め、学会で報告した。 3)我が国世帯の資産保有の実態:「家計調査」をベースに世帯保有資産額等を推計するプロジェクトに参画し、80年代半ば以降の各年の資産保有実態を公表した。
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