研究課題/領域番号 |
24530236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
上田 和宏 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (50203435)
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研究分担者 |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30189534)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 仕事の満足度 |
研究概要 |
研究初年度にあたり、仕事の満足度について、経済学の領域における先行的実証研究について文献資料を収集し内容の整理を行った。労働供給の決定において、伝統的な経済学において扱われる経済的要因だけではなく、非経済的要因が重要な意味を持つことが指摘されるようになってきている。これらに関して、Akerlof (2000)、Farzin (2009)、Ratzel (2012)などをもとに理論面の整理を行った。そして、そのような非経済的要因を考察するために、労働の動機である仕事の満足度に影響する要因について実証分析を行った。 実証分析においては、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブセンター(SSJDA)に所蔵されている「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート」(連合総合生活開発研究所)を利用した。期間は2005年から2010年で、年2回、計11回分のアンケート調査結果を使用した。仕事の満足度や職場環境などについての主観的評価、調査対象者の社会・人口的属性に関するデータの整理とそれらをもとにした分析を行った。分析では、被説明変数間の相関を考慮した多変量プロビットモデルを容易に推定することができるBayesianの手法を用いた。推定結果から被説明変数間の相関係数、偏相関係数の平均や標準偏差などを求めて分析を行った。 分析の結果、仕事の満足度には、勤労者の働きがいや賃金・処遇についての納得、精神的ストレス、職場の人間関係、ワークライフバランスなどについての主観と関係が深いという結果が得られた。また、所得や年齢など社会・人口的属性との関係も海外で得られた知見と似た結果となった。これらについて、現在、社会学や心理学などの既存研究などとも照合しながら論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証分析をまとめる過程で、勤労者全体を対象とするだけでなく、正規雇用者と非正規雇用者、あるいは、男性と女性に分けるなど対象をグループ化して分析を行う必要が生じた。 また、経済分野の既存研究についての整理を行ったが、結果を解釈する上ではそれだけでは十分ではなく、心理学・社会学領域の既存研究についても調査を行う必要が生じた。これらの領域では豊富な既存研究が存在するが、それらのなかでわれわれの実証分析に役立つ文献や内容の整理を行った。 これらの事情を考慮しても、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と分担者は、25年度には24年度に行った実証分析をさらに拡張し、本格的な実証モデルを作成して分析を進める。また、研究代表者は、他の利用可能なデータベースを用いて結果の追従作業の準備を行い、仕事の満足度とさまざまな経済的・非経済的要因との関係を明らかにする計画を立てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度後半に行う予定であった本格的な実証分析を25年度に行うこととなったので、24年度にはそれに用いるパソコン購入経費を執行せず残した。25年度にはその経費を含めた予算のなかで、パソコンを購入するとともに必要なソフトウエアの購入などを行う。また、資料・文献の購入や研究情報の収集や研究打ち合わせのための旅費を使用する予定である。
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