研究課題/領域番号 |
24530236
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
上田 和宏 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (50203435)
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研究分担者 |
長谷川 光 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30189534)
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キーワード | しごとの満足度 / ベイズ統計学 / 順序選択モデル / MCMC |
研究概要 |
今年度は連合総合生活開発研究所によって行われている「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」のデータを利用して日本の民間企業で働く労働者のしごとの満足度についての実証分析を行い,海外の雑誌に投稿した.さらに,同データを利用してしごとや生活,健康に対する満足度や所得をもとにした多次元不平等尺度を用いてしごとの満足度の不平等の実証分析を行うことに着手した. 近年,経済学では従来利用することを避けてきた人びとの主観的な認識を表す要素を分析に取り込み,人びとの経済行動をより精緻に分析する研究が進められてきた.しごとの満足度の実証研究では,しごとの満足度やしごとのやりがい,賃金の満足感,職場でのストレスや職場の人間関係の満足感などの労働者の主観を表す複数の被説明変数を年齢,性別,婚姻,正規雇用・非正規雇用などの人口的・社会的状況を表す説明変数として推定を行った.このような推定はnon-Bayesianの手法では推定が難しく,われわれはBayesianの手法を用いて推定を行った.推定の結果,女性や既婚の方がしごとの満足度が高くなる.年齢は,若いときから年を重ねていくにつれしごとの満足度に負の影響を及ぼすが,一定の年齢を過ぎると正の影響を及ぼす.そして,しごとのやりがいや過度なストレスがないこと,適切な賃金や労働条件であること,職場での良好な人間関係,ワークライフバランスが考慮されていることなどがしごとの満足度を高めることなどがわかった.こうした実証分析は海外のデータをもとにして行われている研究は多いが,われわれは日本の民間企業のデータをもとにして分析を行った.これは研究の意義の一つである. なお,次に行っている研究では,不平等感を構成する複数の要素から一つの不平等尺度を求めてしごとの不平等を分析することを目的としているものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画としてしごとの満足度とその経済的・非経済的要因について実証的に分析することとしていたが,日本の民間企業の労働者を対象とした調査を利用した分析を行うことができた.また,その結果をまとめて論文を作成して海外の雑誌に投稿することができた.また,こうした分析の拡張としてしごとの満足度,生活の満足度,健康の満足度,所得について人口的・社会的要因との関係を推定して不平等の多次元尺度を用いた分析を行うことに着手することができた.そして,この研究に関する文献研究や実証モデルの作成などを進めることができた.こういうことから研究は「おおむね順調に進展している」と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と分担者は、26年度には25年度に着手した多次元尺度を用いたしごとの満足度の不平等についての実証分析を行う.さらに,しごとの満足度など主観的な要因を考慮した研究成果をもとに従来の経済モデルの問題点を分析する.そして,しごとの満足感への多様な要因を分析した成果をいかし,生活の充実や幸福を高めるための政策分析を行う.
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