平成26年度は、前年度作成論文の学会における報告と学術雑誌への投稿を行った。経済構造変化点が未知である場合や非線型性を考慮した場合について、単一時系列を対象とする検定と分析対象検定との検定パフォーマンスの比較を行った論文“Performance of multiple testing in nonstationary panels and empirical applications”については、the 77th International Atlantic Economic Society Conference (Madrid)及び統計関連学会連合大会(東京大学)において報告を行い、同時に得られたコメントも参考にしつつ論文の加筆・修正を行った。非線型なpairwise cointegrationを対立仮説とした新しい多重検定手法について、その検定パフォーマンスの検証と実証分析への適用を行った論文“Linear and nonlinear comovement in Southeast Asian local currency bond markets: A stepwise multiple testing approach”については、学術雑誌に投稿し、その後、加筆・修正を行い、Empirical Economicsに掲載が決定した。また、開発途上国の金融市場を別のアプローチにより分析した論文“The global financial crisis: An analysis of the spillover effects on African stock markets”(共著)も執筆し、Emerging Markets Reviewに掲載された。 得られた成果のうちの特筆すべき事柄の1つとして、Romano and Wolf (2005)(Econometrica誌掲載)の手法をパネル単位根及びパネル共和分検定に応用することで、Bonferroni、Holm、Simesなどの多重検定手法の検出力の低さを補い、実用に耐えうる検定となることが示されたことと、さらに、他のパネル検定手法に比べて経済構造変化や非線型性といった時系列データの持つ特性を検定に取り込み易く、また検定パフォーマンスの面においても十分な性能を持つことが示されたことが挙げられる。
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