研究課題/領域番号 |
24530240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柳瀬 明彦 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10322992)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際公共財 / 動学的貿易モデル / 再生可能資源 / 微分ゲーム / 資源枯渇 / 企業の環境意識 |
研究概要 |
本研究は、1. 越境汚染ストックの影響が存在する下での貿易自由化の短期的・長期的効果、2. 公共中間財のストック外部性が存在する下での大国間の貿易および国際援助の効果、3. 再生可能な天然資源の利用と戦略的貿易・資源管理政策、という3つのサブテーマについて新たな理論的知見および政策的含意を導くことを通じて、資源・環境問題やインフラ整備のような、ストックとしての外部効果の存在する経済における、経済主体間の戦略的関係が存在する下での国際貿易と外部性ストックとの相互関係を理論的に検討するものである。今年度は各サブテーマに関して、以下の研究成果が得られた。 サブテーマ1については、企業が利潤だけでなく環境汚染の社会への影響をも考慮に入れて生産活動を行う状況を想定し、動学的な寡占競争モデルとして定式化した論文を作成し、またこの動学的寡占競争モデルを応用して貿易自由化の効果を検討した論文を作成した。これら2本の論文は、国際学術誌に掲載された。 サブテーマ2については、ストックとしての生産性効果を持つ国際公共財が存在する2国動学的貿易モデルを構築し、各国政府が国際公共財への拠出行動を協力的あるいは非協力的に行うとの想定の下で、貿易パターンの決定要因や貿易の国際公共財水準や各国の厚生水準への影響を検討した。この研究は、国内外の学会等で報告した。 サブテーマ3については、基礎となるモデルとして中間投入物としての再生可能資源が存在する小国貿易モデルを構築し、貿易が資源枯渇を防ぐ可能性を示した。この研究成果をまとめた論文は、国際学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で述べたように、本研究課題の3つのサブテーマのそれぞれについて、最も単純な設定の下であるが基本モデルを構築し分析を行い、研究成果の発表あるいは論文の投稿を行った。次年度以降、これら基本モデルを拡張し、研究の発展を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
各サブテーマについて、今までの研究成果を整理する。具体的には、前年度までに刊行した共同論文を含む自分の研究について、解明された点と今後の課題としている点との区別を明らかにする。また、既存の研究及び関連する研究の整理と再検討もさらに行う(国内外の学会・研究会への参加を通じた、最新の研究に関する情報の入手も含む)。これらの作業を通じて、新たなリサーチトピックの所在を明らかにし、モデル分析を進め、学会発表あるいは学術誌への論文投稿を目指す。 既に研究会や国内外の学会で報告しコメントを得た研究成果に関しては、コメントを参考に論文の改訂に努め、早期に論文を国際学術誌に投稿する。学術誌に投稿後、修正および再投稿を求められた論文は、最終的な掲載を目指して論文の改訂を早期に行う。論文の再投稿の際、ネイティブスピーカーによる論文の英文校正を依頼する。 新しい研究成果に関しては、研究会や国内外の学会で報告し、また論文をディスカッションペーパーの形で随時Social Science Research Network (SSNR) 等を通じて発表する。 自分の論文作成と並行して、関連分野において優れた業績をあげている研究者を招聘し、研究セミナーを開催する。招聘研究者およびセミナー参加者との意見交換を通じて、研究の方向性・発展性について多面的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連研究の整理および再検討のため、本研究に関連の深い経済理論および応用経済学(国際・環境・公共)の文献資料を購入する、あるいは文献複写サービスを利用する。資料整理に際しては、必要に応じて、研究補助のアルバイトを雇用する。 理論モデルの分析は基本的には定性的に行うが、必要に応じて数値計算やシミュレーションのための最新のソフトウェアを購入し、解析も行う。 研究成果の発表や資料収集のため、国内出張や海外出張を行い、国内外の学会や研究会に参加する。また、必要に応じて研究テーマに関連した実態調査も行う。 研究セミナーの開催に際しては、招聘研究者に対して旅費および謝金の支払いを行う。 学術誌に論文を投稿する際、英文の完成度を高めるために、信頼できる英文校閲の専門家あるいは専門業者にネイティブチェックを依頼する。
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