研究課題/領域番号 |
24530244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
永田 雅啓 埼玉大学, 教養学部, 教授 (50261871)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 貿易指数 / 東日本大震災 / サプライチェーン / 輸送コスト / 資本財輸出 |
研究概要 |
東日本大震災によって現実に日本の輸出がどの程度減少したかを金額(円ベース)で月ごとの変化を調べてみると、2011年の4月、5月には3月に比較して輸出金額の減少が見られるが、こうした変化のかなりの部分は震災の影響というよりも季節要因によるものである。また、2011年6月-12月には、2010年や2012年の同時期の輸出金額と比較しても遜色のない水準にまで回復している。結論的には、東日本大震災はその被害の大きさに比較してマクロ的には日本の輸出に予想されたような甚大な影響は与えず、しかも2~3ヶ月という短期間で回復したと考えられる。 次に日本の主要輸出品目である機械類についてみると、一般機械(HS84類)と精密機械(HS90類)では、月別変化で見ても日本の輸出金額にほとんど影響を与えていない。電気・電子機器(HS85類)では、2011年の6月以降、2010年に比較して12%程度の減少が見られる。ただし、この時期は、円高が進行していた時期でもあり、輸出金額の減少が為替レートの影響である可能性も高い。輸送機械(HS86-88類)では、2011年3~6月には震災の影響と思われる輸出額の急激な減少が見られ、特に4月、5月にその傾向が顕著であるが、7月以降はほぼ例年並みに回復している。以上から、震災の影響が明らかなのは、自動車などの輸送機械を中心とする分野に限定され、しかもその落ち込みも3~4ヶ月で回復している。 一方、東北地方の港や空港からの輸出額は震災後に急減し、回復も遅い。以上から、東日本大震災は、港湾、空港などの日本の輸出インフラには甚大な被害を与え、その回復も緩慢だが、生産基盤にはそれほど大きな損失は与えなかった、あるいは、生産能力の減少を、日本の他地域で補ったり、東北地方で生産された製品を他地域の港湾・空港から輸出したりするという代替措置が迅速にとられたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本震災後のサプライチェーンの短期の変化を分析するためには、次のような要因を考慮する必要がある。すなわち、日本の輸出入に影響を与えたのは、①被災地における供給途絶による輸出減効果に加えて、②震災後の放射能汚染、特にそれの風評被害によって、農水産品のみならず日本の工業品までが忌避された効果、③さらに、震災後に進んだ円高によって日本からの輸出が減少した効果などである。このうち、①と②の効果については、港湾・空港ごとの輸出額は大きく変化していたが、日本全体からの機械類の輸出は輸送機械を除いては大きく減少はしておらず、しかも3ヶ月程度で元の輸出水準に回復している。これは、一つのファクト・ファインディングであり、当初予想していなかった興味深い事実の発見である。今後は、より細目の品目や相手国ごとの傾向の違いなどの分析を行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、既に開発したソフトウェアを用いて2012年までの日本の関税地区別の貿易指数データベースを構築する予定。また、これらを通じて東日本大震災前後で日本の貿易構造、特に資本財貿易の構造がどのように変化したかを分析する。これらを通じて、2011年を境に日本ならびにアジアの貿易構造と部品調達がどのように変化したのかの定量的な関係を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費の一部に充当する予定。
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