研究実績の概要 |
本研究では、日本の輸出のうちサプライチェーンに関連の深い機械類を中心に分析した。具体的にはHS84~90の6桁の品目である。震災被害に遭ったと品目は、HS6桁ベースの機械類品目1,030品目中、91品目である。カテゴリー別にみると、品目数では一般機械が多いが、輸出金額ベース(2010年)では、自動車等の輸送機械85.5%と圧倒的であり、中でもHS 870323と870324(乗用車)の2品目だけで約60%を占めている。
今回、極めて短期間でほぼ正常な生産に戻せたのは、震災の被害の最も深刻だった自動車産業で会社の壁を越えた協力関係が構築できたことがある。しかし、自動車関連品目(HS8701~8708)の輸出減を税関地区別に見ると、東北地域からの輸出減は極めて小さく、自動車輸出減の大部分(58.1%)は中部地域からの輸出減によるものであり、次いで関東地域の23.4%である。一方、地域間産業連関表(53部門)を用いて東北地域からの自動車部品・同付属品の自地域と他地域への供給金額を見ると、中部地域への供給は6.4%に過ぎない。以上の状況は、今回の震災による日本の自動車を中心とする輸出減の主たる要因として海外の需要要因も大きいことを示唆している。実際、震災後には米国やアジア主要国、中東、ヨーロッパの国々で、日本からの輸入に対して放射線検査や放射線量に関する証明書の添付要求を含む規制が行われた。これに風評被害が加わり、日本からの輸出が減少したと思われる。
次に長期(ここでは1年以上を考える)の影響について分析すると、第1に自動車等の輸送機械を除くと震災被害品目の輸出金額は2014年でも回復していないものが多く、第2に、自動車等の輸送機械は輸出金額は伸びているが、相手国市場でのシェアはむしろ低下している。日本から輸出が伸びている理由は、海外の輸入市場が拡大しているためである。
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