研究課題
実験研究は次の2段階で計画を進めてきた。すなわち第1段階は、労働に、自己のタスクと、他者の仕事を助けるタスクの2種類があるというチーム生産状況において、労働者全体に分配されたパイを労働者間で均等に分ける年功型賃金モデルと、パイを自己のタスクへの労働投入量に比例して分配するという成果主義型賃金モデルを考える。そしてこれらのいずれかのモデルを所与としたとき、雇用主は労働者全体に分配するパイの大きさ(労働分配率)をどのように選択するか、同時に労働者は、余暇と労働(自己のタスクとヘルプのタスク)のあいだで労働投入量をどのように選択するかを観察するものである。第2段階は、さらに雇用主が、年功型賃金モデルと成果主義型賃金モデルのどちらのスキームを選択するか決め、このもとで第1段階のサブゲームが行われる状況を考察する。すなわち雇用主の制度選択を内生化したうえで、雇用主の労働分配率、労働者の労働配分を観察する。25年度においては第1段階に関する実験を完了し、ほぼ順当な量のデータを得た。分析の概要をまとめて,関係の学会および研究会で報告した。労働者に関する実証分析については次のように行った。アンケート調査の結果を用い、労使協議制等の労使コミュニケーションの有無によって、成果主義の導入が企業業績に与える影響がどのように変わるかを計量分析した。得られた結果を学会およびコンファレンスで報告した。
2: おおむね順調に進展している
雇用主が労働成果をどのように自己と労働者に分けるか、そのもとで、労働者は、自己のタスクと他者を助けるタスクという複数のタスク間で、どのように努力配分を行うか、その選択は年功的賃金制度と成果主義賃金制度(相対業績評価)という二つの報酬制度の下でどのように異なるかについて、多数のケースについて経済実験を行った。実験結果を見ながら、補足的な実験も行った。多くの有効なデータを収集でき、当初の計画に沿って実験を進めることができた。
実験研究については、26年度は「研究実績」の欄に記述した実験計画のうちの最終段階である第2段階目の実験を実施する予定である。労働者に関する報酬制度の調査については、個々の直面する報酬制度の実態だけでなく、仮想的な質問に対する反応を個人アンケートで調べ、両者の関連性を分析することを計画している。
実験がうまくいかず追加的な実験が必要となったときを考慮し、資金の余裕を見込んで立てた当初計画案よりも、比較的順調に経済実験が進んだため。また労働者個人を対象とするアンケート調査の実施を最終年度に持ち越したため。先の第2段階の経済実験、および労働者を対象とした報酬制度に関するアンケート調査を実施する予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
in Advances in Behavioral Economics and Finance, Ikeda, S.; Kato, H.; Ohtake, F.; Tsutsui, Y. (eds.), Springer
巻: 書籍所収論文 ページ: Forthcoming
『実験が切り開く21世紀の社会科学』第13章,
巻: 書籍所収論文 ページ: 157~172