研究課題
これまで、①自分の仕事を遂行するタスクと同僚の仕事を助けるタスクという二つのタスクがあるマルチタスクの状況において、成果主義的賃金制度(比較業績評価にもとづく賃金制度)と年功的賃金制度(平等主義的賃金制度)という二つの賃金制度のもとで、タスク間の努力配分がどのように異なるか、②労働者のプレイヤーどうしが固定されている場合とランダムに変化する場合とで、タスク間の努力配分がどのように異なるか、③賃金原資からの労働分配率が異なるとき、タスク間の努力配分がどのように異なるか、④賃金制度を外生とせず、経営者プレイヤーがあらかじめ成果主義的賃金制度と年功的賃金制度のどちらかを選択するとき、どちらの制度を選択するか、⑤制度が外生的に与えられているときと、経営者によって内生的に選ばれるときで、労働者のマルチタスク間の努力配分はどのように異なるか、といった点について経済実験を行ってきた。骨格的な部分の検証はすでに終えていたが、最も実験が複雑な④と⑤のケースについては、実験のサンプル数が比較的少なかったので、これらのケースについて追加的な実験を行い、より統計的な検証に耐えるようにサンプル数の充実を図った。また、④と⑤において、成果主義的賃金制度(比較業績評価にもとづく賃金制度)の場合、同僚の仕事を助けるタスクの努力量は観察しえず、評価に用いられないという前提で制度をつくっていた。けれども、他方の年功的賃金制度においては、そもそもこの観察不可能性は問題とはならない。したがって、同僚を助けるタスクの観察不能性が、成果主義的賃金制度においてどのような効果をもたらすかが明らかにされなければ、年功的賃金制との比較も十分に行うことができない。そのために、同僚の仕事を助けるタスクも観察され、評価に用いられるように制度を変えた場合の成果主義的賃金制度を考え、この補足的なケースについても実験を行った。
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