家計の貧困と子供の健康状態に関して複数の日本のマイクロデータを用いた分析を行った.第一に,各家計の日次消費データを用いて,母親が働くことで健康によいと考えられる財の消費量が減少すること,この効果は貧しい家計であるほど大きいことを明らかにした(結果は“Maternal Employment and Food Production at Home” としてReview of Economics of the Householdに近刊). 第二に,1975年から2010年の県別パネルデータを用いて,非正規労働者率が高いほど新生児の健康状態が悪いという負の関係がとくに2000年代以降において強く存在することを明らかにした(結果は “Effect of Parental Employment Status on Infant Health”として査読付き学会発表に応募中). 第三に,大阪大学による「暮らしと好みに関するアンケート調査」により,様々な要因を取り除いたとしても資産の減少は健康の悪化に影響することを明らかにした(結果は“The Relationship between Health and Wealth : Evidence from Japanese data before and after Lehman shock”として査読付き学会発表に応募中). 第四に,大阪府下で合計7つの調査(失業者や求職者,就業者に対するアンケート調査,大学生に対するアンケート調査,企業人事課に対するインタビューおよびアンケート調査,派遣元企業に対するインタビュー調査,大学卒業生に対する1年間の追跡調査)を行うことで,劣悪な雇用環境や失業経験が個人の健康を悪化させることや,貧困家計の子供が労働や健康に対して不安を持つ様子を明らかにした(「若年女性の労働供給」2015年3月,未公刊).
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