研究課題/領域番号 |
24530253
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岸田 研作 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30346407)
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研究分担者 |
谷垣 靜子 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (80263143)
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キーワード | 社会的入院 / 医療経済学 |
研究概要 |
社会的入院とは、医療の必要性が低いにも関わらず、介護施設や家族の介護力の不足などにより、退院できず入院を継続することである。社会的入院は、医療の必要性が低い者による医療資源の無駄遣いを引き起こす。社会的入院を解消するには、その受け皿となる介護施設の整備が必要である。 2013年度は、二次医療圏単位のデータセットを作成し、地域の病床及び介護施設の定員数が、高齢者人口当たりの社会的入院数に与える影響を分析した。社会的入院は、「受け入れ条件が整えば退院可能」な入院患者である。 2005 年と2008 年を比較すると、高齢者人口当たり社会的入院患者数は、2005 年の65 人から2008 年の48 人に17 人減少していた。2005 年を対象とした推定結果:地域における一般病床および医療保険適用介護療養病床の増加(減少)は、社会的入院患者数を増加(減少)させる。このことは、病床数が多くなると、医療機関は病床を埋めるため医療の必要性が低い患者を受け入れる傾向があることを示していると考えられる。居住系施設の定員増加は、社会的入院患者を減少させた。これは、これらの施設が医療必要度は低いものの在宅生活が困難な要介護者を受け入れることで社会的入院患者を減少させていることを示していると考えられる。しかし、介護保険三施設の定員数は、社会的入院患者の減少には影響しなかった。2005 年もほぼ同様の傾向が観察された。従属変数および説明変数として、2008 年と2005 年の差分を用いた結果では、決定係数は大きく低下した。一般病床数及び医療保険適用療養病床数は有意であった。しかし、横断面データで有意であった居住系施設の定員は有意ではなく、2005年に社会的入院をしていた患者の受け入れ先は不明であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2000年代半ばには大規模な市町村合併委が相次いだので、二次医療圏別のデータセットの作成にはかなりの時間と手間がかかる。また、初めて用いるデータでは、その性質や処理方法の理解に時間がかかる。2013年度は、データセットの構築とそれらを用いた予備的分析を行うことで、データの性質や今後の分析課題に対する理解が深まった。
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今後の研究の推進方策 |
「医療経済学会」をはじめとする各種学会に参加することで、研究成果の発表や再診の研究に対する知見を得る。 「月刊介護保険」や「日経ヘルスケア」などの最新の医療・介護分野に関する情報が掲載された雑誌を購入する。また、研究に関連した書籍の購入にもあてる。 データセットの作成では、業者に入力依頼をする必要がある変数もある。そのため、入力依頼費として用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初行く予定であった学会で、当該研究に密接に関連する研究成果の発表が行われなかった。 社会的入院は医療と密接に関係があるため、医療系の学会参加が有益と考え、その費用に充てる。
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