本研究では、地方自治体が独自に実施する政策である子ども医療費の無料化と公立病院の設置・運営に関する理論的・実証的分析を行う。平成26年度の研究では、その先行研究のサーベイを踏まえ、ニュー・パブリック・マネジメントと呼ばれる公立病院改革の効果と成果について明らかにする。研究最終年度であるので、研究全体の総括を行う。 平成26年度は、公立病院改革で活用される病院のエージェンシー化について、その制度をまとめ、地方公営企業で期待される「経済性」と「公共性」の両面がどのように実現されるのか、実現されないのであれば、どの部分が障害となるのかをHolmstrom and Milgrom(1991)のマルチ・タスク・モデルを用いて明らかにした。 本稿の主要な結論は、(1) 近年の公立病院改革では、民間的経営手法の活用が求められている。その代表的手法として、指定管理者制度・地方独立行政法人・PFIの3つがある。これら手法を活用し、成果を得るためにはインセンティブ設計を行う必要がある。(2) 非営利病院において余剰と病院のサービス使命に関する成功度の2つを考えるマルチ・タスク・モデルでは、病院のサービス使命の実現に関する努力を引き出すため、その成果指標を契約で用いないこと、余剰に関する出来高率を引き下げることが最適契約である。(3) 指定管理者制度・地方独立行政法人・PFIの3つを早期に活用した病院の契約と制度を検討した。この内、指定管理者制度を活用した病院には、「経済性」と「公共性」の両面を実現させるインセンティブ設計があり、公立病院の役割を効率的に実現している。 子ども医療費の無料化の実施に関する影響の計測は、本研究の成果に基づき、総務省『全国消費実態調査』の匿名データの利用が許可された。 研究全体の総括として、医療費負担のあり方に関して、健康保険組合連合会より寄稿の依頼があった。
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