研究課題/領域番号 |
24530262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
篠崎 剛 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (80467266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 政治活動 / 公共経済学 / 国際経済学 / 経済成長論 |
研究概要 |
本研究の目的は,利益団体が存在するもとで経済政策が各国の所得水準に与える影響を,世代重複モデルを用いて理論的に明らかにすることである。特に(1)「教育」により蓄積する人的資本が存在する場合に,また,(2)「国内の租税政策」が存在するもとで,生産要素移動の移動によって,どのような所得配分が実現されるかを明らかにする。 本年度の研究実績は次のとおりである。 (1) については,連携研究者の柳原光芳准教授と二国の人的資本を含めた世代重複モデルの振る舞いについて研究を行い,次年度以降の各国の政治家の政治活動が,動学経済にどのような影響をもたらすかを明らかにするモデルの構築を試みた。 (2)については,2つの論文を作成し投稿準備中である。(2-1)政治活動が政府の経済政策に与える影響を分析するため,中央政府と地方政府に対してロビー活動があるもとで,垂直的外部性が政府間所得移転によって内部化可能かどうか,およびそのときの政府間所得移転の方向について明らかにした論文“A POLITICAL ECONOMIC ANALYSIS OF FISCAL GAP”を作成した。これはInternational Institute of Public Financeにおいて報告することができた。(2-2)政治活動が動学経済に与える影響を分析するため,短期政権が存在するもとでの公債の持続可能性を分析する世代重複モデルを構築し,政治家の政治献金への関心によって公債の水準が決定されることを明らかにした論文“Public debt, lobbying and endogenous redistribution in an overlapping-generations model”を作成した。これは新潟大学,同志社大学および京都産業大学の国際ワークショップにおいて報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初の研究計画では,(1)教育のあるもとでの人的資本蓄積が,および(2)租税競争があるもとでのロビー活動が,動学経路を通じて国際間の所得配分に与える影響を考察する予定であり,それらはおおむね順調に進んでいる。 これに加えて,公債の持続可能性について,租税水準がロビー活動の影響を受けていること,および近年の先進国において財政状況が悪化していることから,ロビー活動と公債の持続可能性の関係について,カターニャ大学のIsidoro Mazza教授および愛知大学の國崎稔教授とともに新たに動学モデルの構築し分析を行うことができた。これはすでにいくつかの研究会での報告を行い,次年度には国際学会で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は(1)本年度に構築した,国際間資本移動が存在する人的資本モデルを用いて,国家間の国際間所得移転が各国の経済成長率に与える影響について分析を行い,その時点での研究成果をまとめること,(2)現在,小国モデルに基づいて議論し,ロビー活動の存在するもとでの公債の持続可能性について明らかにした動学モデルを,東北大学,早稲田大学および名古屋大学での研究会およびInternational Tax and Public Financeでの報告後,コメントに基づいて修正後,研究雑誌への投稿を行う予定である。後者の論文については,9月頭までを報告をもらう期間とし,それらをまとめ12月には投稿する予定である。 さらにここでの蓄積の効果をHoyt (1991) およびHaufler (2001) でなされているような租税競争モデルへ適用し,租税競争が長期の所得分配に与える影響を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては,(1)本年度の研究結果を発展させるため,動学的枠組みにおけるロビー活動の経済分析についての報告をInternational Tax and Public Finance(8月22~25日)にて行うための渡航費,研究連携者との共同研究および研究会での報告をするための交通費(主に名古屋と京都),(2)資料印刷等のための消耗品費,(3)図書費および(4)研究者の招聘に使用する予定である。
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