本研究は、開発途上国、特にインドにおける都市部と農村部の経済構造の違いと連関構造を定量的に明らかにするためにインドを都市部と農村部に分割統合した都市ー農村地域間産業連関表を推計することを目的にしている。インドは別として、行政的な括りである県、市区町村を単位にした地域あるいは地域間産業連関表は多々存在するが、それを都市ー農村という特に開発途上国の経済分析に重要な単位に分割・統合した産業連関表の推計は世界的にも類がない。本研究期間を通じて、インドの都市部および農村部に関する地域産業連関表の推計はほぼ完了したが、これら2地域を連結する情報に乏しく、都市ー農村地域間産業連関表の推計にはまだ時間が必要である。一方で最終年度においては、地域産業連関表における家計部門の推計の目的で編纂したデータにより、都市および農村における家計消費の脆弱性の測定を実施し、リスクに対しては農村家計がより脆弱であることが示された。さらに地域産業連関表の推計の過程の中でインド全国表の修正推計も必要になったが、この修正インド産業連関表を産業連関ベースの世界経済モデルに組み入れることにより、インドにおけるエネルギー・環境政策が世界のエネルギー市場に与える影響のシナリオ分析も実施した。本研究の最終目的は、インドにおける貧困削減政策、持続可能な発展を目的にしたエネルギー・環境政策が、都市・農村という地域間の連関構造を通じて、都市農村間の格差を拡大するのか縮めるのかを定量的に明らかにすることであり、持続可能な発展と貧国の削減を両立させるための政策オプションを検討することにある。この目的を達成するために都市農村地域間産業連関表の推計を完遂することが不可欠であり、今後も継続的に推計作業を進捗させ、産業連関ベース世界経済モデルに組み込み貧困および持続可能な発展の政策シナリオ分析を実施することを予定している。
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