研究課題/領域番号 |
24530268
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
岡本 信広 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (00433863)
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研究分担者 |
穆 尭芋 公益財団法人環日本海経済研究所(調査研究部), 調査研究部, 研究員 (00551417)
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キーワード | 中国 / 産業連関分析 / 小地域 / LQ |
研究概要 |
本研究の平成25年度の到達目標は小地域産業連関データの推計と制度検査であった。収集した各省の産業連関表の特徴を分析した。特に注目した点は小産業連関モデルを構築する場合の移輸入の取り扱いについて検討を加えることであった。中国の産業連関表は移輸入が競争型で表示されており,地域での中間財取引の中に移輸入が含まれている。この移輸入競争型産業連関モデルを用いると,分析対象地域の乗数効果が過大評価されることが想像される。そこで,2007年の30省すべてにおいて,地域産業連関モデルにおける移輸入の影響を測定した。結果,各省の産業連関モデルは乗数レベルで平均約3割過大評価されていることがわかった。したがって小地域産業連関モデルを作成するには,移輸入をうまく推計して地域取引から取り除く必要がある。 そこで,中国の小地域産業連関モデルを推計するためにFleggら(1995)が開発したFlegg Location Quotient(FLQ)法が応用可能かどうか検討した。FLQ(そしてその派生バージョンであるAFLQ)の特徴は,地域の規模にもとづいて移輸入を調整するというものである。(AFLQは地域規模と地域特化の二つを考慮して移輸入を調整する。)30省を対象にFLQを応用してみた実証結果は,あまりあてはまりがよくなかった。つまり中国の地域レベルでは移輸入は地域規模にそんなに依存していないということである。地域規模を利用して小地域産業連関モデルを構築することは,中国では困難であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
中国の小地域産業連関モデルを構築するにあたって,過去の先行研究を中国にあてはめて検証してみた。結果は先行研究と違って中国では精度の高い小地域産業連関モデルをnon-surveyで推計することが難しいことがわかった。その原因について,特化の経済を仮定してみたり,産業集積を考慮するなどさまざまな方法を検討しているが,どれもあてはまりはよくない。ここで新しい移輸入を推計するモデルを構築することができれば,手法面でのブレイクスルーだと思っている。しかし,新たなNon-survey手法の確立はそれだけで一つの研究トピックであり,中国の小地域開発を分析する本研究の範疇を超えてしまう。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究で用いられている推計手法がそのまま中国ではあてはまらないことがわかった現在,研究視点を少しずらすことを検討している。 本研究の目的は,現在中国で実施されている新区や試験区の開発が地域発展に与える影響を計測することである。そこで,小地域産業連関表の推計手法の開発は別途機会を改めて一つの研究テーマにすることとし,本研究では,中国政府によって公開されている30省地域間産業連関表を用いて,地域をブレイクダウンせずに省レベルにおいても新区や試験区レベルでも生産関数(投入構造)は同じと仮定して,開発効果を測定する方向を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究を実施する夏休みに校務で短期語学研修引率業務が入ったため,現地調査を実施することができなかったため。 次年度は,夏休みに中国東北地域の出張および成都周辺を調査するとともに,最終年度のとりまとめに使用する予定である。
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