研究課題/領域番号 |
24530269
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
井尻 直彦 日本大学, 経済学部, 教授 (50320990)
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研究分担者 |
前野 高章 日本大学, 経済学部, 助手 (00590605)
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キーワード | 分析用データベース作成 / 国際規格と貿易財の対照表作成 |
研究概要 |
2013年度は、前年度までに得た研究成果に対して国内外の研究者らからコメントを受けるべく、2度の国際学会における研究報告を中心に研究活動を実施した。まず5月に日本国際経済学会の関東部会で本研究の中途の研究成果を報告し、国際規格の任意性・強制性に関してコメントを受けた。これは実証分析結果に影響を及ぼす可能性があり、検討すべき課題である。次に6月に国際規格に関する最も重要な学会であるEURAS(European Academy for Standardisation)で報告する機会を得た(査読あり)。この学会では、本研究に関して高い関心を得ることができ、欧米を中心とする国際規格の研究者やISOの研究者から数多くの質問・コメントを受けた。特に複数の財に該当してしまう国際規格の分析上の取り扱いに関して再考するきっかけとなった。そして、7月にAPEA(Asia-Pacific Economic Association)で報告し、フロアからHS6桁ではなく、より詳細な財分類(例えば10桁)を用いたほうがより精緻な実証分析が可能になるとコメントを得た。しかし、国際的に比較可能な貿易データはHS6桁で作成されており、これを実施するのは不可能である。今後、「日本の貿易」など一カ国を分析対象とする際には9桁などより詳細な財分類により分析することを検討してみたい。 これらの報告に際して得られたコメントを受け、本研究を改善すべく次のような研究作業を実施した。まず、国内規格の国際規格との同等性を考慮するために、前年度に作成した国際規格とHS6桁財の対照表にこの同等性の情報を加えた。そしてこれを分析用データセットに統合し、実証分析可能なデータセットの作成をした。目下、推計作業を繰り返している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に計画以上に貿易財と国際規格の対照表作成を進めることができたため、計画よりも早く、かつ多くの学会で報告することができた。それにより、多くの有益なコメントを得ることができ、より詳細な対照表を作成する必要が高まり、その作業に取り掛かることができた。すべての財を対象として対照表の作成は時間的に不可能であるため、工業品の中でも主要な製造業製品(ISIC29からISIC35)にしぼり、各国際規格と貿易財の対照表を作成した。さらに、経済産業省と日本規格協会の協力により、日本の国内規格と国際規格との同等性の情報を入手することができたため、これらの情報をさきの対照表に加えることができた。当座は日本だけの分析になってしまうが、このような対照表を用いた先行研究は存在していない。これをもとに日本における国際規格と非関税障壁の関係を計量的に分析することが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のような方策で研究を推進する予定である。まず、作成したISICC29から35産業までのHS6桁とISO規格との対照表の正誤確認をし、各規格の発行年を調べて、各HS財が規格化財に転じた年(つまり該当する規格が発行された年)を明らかにする。これを計量分析用データセットに加える。次に、このデータをもとに、新規の輸入発生が規格化財と差別化財において統計的な差異があるかを分析する。もし差異がある場合、国際規格発行が新規輸入の発生に影響を及ぼしていると考えられる。この計量モデルを初期の予定に従い、1996年から2010年の期間で先進国と途上国を含む57カ国間の貿易データを用いて分析する。そして、国際規格と同等ではない国内規格が輸入の非関税障壁になっているかどうかを分析する。これは日本の国内規格の同等正の情報しか無いため、日本の輸入における非関税障壁の分析となる。しかし、このような先行研究は存在しておらず、分析結果は今後の研究のベンチマークとして有意義であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった統計分析用ソフトウェアのアップデート予定が公表になったため、購入時期を次年度に変更した。 統計ソフトSTATA-MP 16coreバージョンの購入を予定している。
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