研究実績の概要 |
これまでの国際貿易理論では,国際貿易パターンに影響を及ぼす要因は,静学理論(ヘクシャー=オリーン・モデル等)においては固定された生産要素賦存比率によって決定されると考えられてきた。また,動学理論においても,人々の投資活動を通じて経済における資本設備が変化することにより生産要素比率が変化するという側面は解明されてきたが,依然として人口・労働力の変化に関する側面は十分に分析されてこなかったのが実情である。本研究課題の最終年度ということで,これまで3年間の研究に引き続き本研究課題の理論が,現実に対してどれだけの説明力を持っているかについて検討を続けた。さらに,死亡確率をモデルに明示的に導入したモデルがある程度結果を出してきたことから,現在,投稿作業と同時進行で,次の研究課題にも着手しつつある。
既に構築した論文“Fertility, Mortality, and International Trade Pattern within a Heckscher-Ohlin Framework”では,内生的な出生率/死亡率が活動に影響を及ぼすような構造を持つ2国経済を仮定して,子育てに伴い発生する養育費用や経済発展に伴い変動する死亡率が長期的にこの経済にどのような影響を及ぼすかを分析できるような動学的国際貿易モデルを定式化した。この論文は,既に結論を出しつつあるため,Working Paperの形でまとめた。この論文並びに関係分野の研究について,内外の研究者からのコメントを受け,国際学術論文雑誌へ投稿する作業を進めている。
さらに,次の研究課題として,「内生的出生率,国際的人口移動,および国際貿易に関する動学理論の研究」が科学研究費助成事業(課題番号16K03677)に採択された。この研究は,本研究課題の延長線上にあるテーマであり,内生的な出生率/死亡率のみならず,海外からの(への)労働移動も存在するような状況下でこれらの要因が国際経済にどのような影響を及ぼすかについて,研究に着手している。
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