研究課題/領域番号 |
24530282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
新熊 隆嘉 関西大学, 経済学部, 教授 (80312099)
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研究分担者 |
菅田 一 関西大学, 経済学部, 教授 (90330167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 排出権取引制度 / 環境税 / 非対称情報 / 長期 |
研究概要 |
情報の非対称性があるもとでの課税と排出権取引の制度間比較は、Weitzman(1974)に始まり、Roberts and Spence(1976),Yohe(1981),Kaplow and Shavell(2002), Mandell(2008), Krysiak and Oberauner (2010)を含む多数の研究に引き継がれてきた。しかしながら、これらの既存研究は新規参入を考慮しない短期的視野に立つものであった。今年度行った研究では、Weitzman(1974)モデルを新規参入を意思決定に含む長期に拡張し、以下の結果を得た。 第一の研究成果は、そのような長期における最適な課税制度と排出権取引制度を明らかにしたことである。長期においては、最適な課税制度は一括税を含み、排出権取引制度では排出権の初期割り当てが必要であることが示された。 第二に、長期における最適な課税制度と最適な排出権取引制度を比較した結果、以下の場合に、排出権取引制度が優れていることが示された。すなわち、排出権取引制度が課税制度よりも優れているのは、①初期投資(新規参入コスト)が小さい、②私的情報の分散が大きい、③規制前の排出量が大きい、④限界環境(外部)費用が小さい場合である。 第三に、上のような条件のもとでは、市場に参入する企業の数が大きくなることが示された。また、市場参加企業数が十分に大きくなったとき、排出権取引制度がもたらす結果はファーストベスト結果に限りなく近づくことも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでは当初の研究計画通り進んでいるが、学術雑誌での成果発表まで到達できるかどうか確信がないため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、情報の非対称性が存在するもとで、ファーストベスト結果を達成する政策を見つけることを目標としたい。既存研究では、セカンドベスト政策の提案にとどまっており、ファーストベスト政策を提示した研究はいまだ存在しない。これにチャレンジしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究推進に必要な書籍等の購入を進めるほか、研究成果の国際学会での発表も予定している。
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