研究課題/領域番号 |
24530283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
熊谷 成将 近畿大学, 経済学部, 教授 (80330679)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | physical activity / health production / dynamic panel model / state dependence |
研究概要 |
1. 厚生労働省「中高年者縦断調査」のデータを用いて、潜在健康ストック(LHS)変数を作成し、同変数と定期的な運動習慣(RPA)を関連づけた研究を行った。本研究は、労働者のRPAとLHSの関係を実証的に分析する上で重要な3点、LHSからRPAへの逆因果性、RPAの状態依存と観察できない個人固有の効果、を考慮した初めての研究である。論文「Persistence of Physical Activity in Middle Age」を国際医療経済学会シドニー大会で報告する予定である。この研究により、以下の4点を明らかすることができた。(1) 観察できない個人固有の効果が初期条件に影響を与えているとき、変量効果プロビットモデルの推定値は状態依存の程度を過大評価する。この問題を考慮したダイナミック変量効果プロビットモデル (DREP) による推定が最も望ましい。(2) 運動習慣とそれ以外のライフスタイル変数の交絡の可能性を考慮しても、RPAがLHSにプラスに寄与することを、DREPの推定を通じて、見出した。(3) 定期的な運動習慣がある労働者は、良い健康状態を持続できる。(4) 喫煙習慣、低学歴、長時間労働と長時間通勤は、RPAに対してマイナスに影響する。RPAの割合を高める政策として禁煙の推奨は重要である。 2. 「日本版総合的社会調査」のデータを用いて、公共スポーツ施設利用に係る費用を引き下げることが、運動をほとんどしない人々の運動習慣と主観的な健康状態の双方を改善することを明らかにした。(1) 都市部の労働者に比べて、地方の労働者は公共スポーツ施設にアクセスしやすい。低所得の労働者は運動をほとんどしない傾向がある。 (2) 幸福度が高い人ほど定期的な運動習慣がある。 (3) 公共スポーツ施設の利用者を増加させる政策は、労働者の運動習慣と主観的な健康状態を改善する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次の3点より「当初の計画以上に進展している」と評価した。 1. 「Persistence of Physical Activity in Middle Age: A Nonlinear Dynamic Panel Approach」を国際医療経済学会シドニー大会で報告できることとなった。 2. 平成25年度以降に実施予定であった研究 (定期的な運動習慣の阻害要因の探求や、運動環境の整備が人々の運動習慣に与えた影響の分析) を前倒しして実施できた。 3. 運動習慣の阻害要因の研究を発展させる形で、家族介護に関する新規の研究を始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次の2点を優先して、平成25年度の研究を遂行する。 1. 「Persistence of Physical Activity in Middle Age: A Nonlinear Dynamic Panel Approach」を英文査読誌に掲載できるよう努める。 2. 家族介護者の介護満足度の決定要因に係る論文の作成に力を入れる。論題は、Satisfaction with informal care in middle age: the determinant of employmentである。この研究は、平成24年度に実施した「運動習慣の阻害要因」の研究を発展させる形で始めたものである。これまでに、介護時間の長さが介護者の健康状態にマイナスに影響することを見出している。欧州(特に北欧)に比べて日本では家族介護の年数が短い。その原因の一つが「介護満足度の低さ」にあると思われる。厚生労働省「中高年者縦断調査」のデータを用いて、前期の介護の満足度が低ければ、今期の労働参加率が上昇するかを明らかにする。また、Dynamic random-effects probit modelを用いて就業者の家族介護継続確率を、SUR probit model with endogeneityを用いて家族介護満足度の決定要因を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、IBM SPSS Text Analytics for Surveys (新規購入 237,930円)を購入することを検討しているため。同年度の予算は50万円である。
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