本研究では,国土交通省により作成される『航空旅客動態調査』から得られる利用者データ,時刻表から得られるサービスレベル情報等を利用して,日本の空港を発地とする起終点間を単位とする国際航空市場を対象に,個々の空港や路線の特徴を考慮しうる枠組みの下で,当該市場特性を応用計量経済学的手法により検討を行った.利用者データとしては,大橋(2014)で利用したICAOがより小地域毎に整理されてモデルとの整合性という観点からは望ましいが欠損が多いという課題があった.一方,今回利用する航空旅客動態調査は海外が方面別に集約されるなど,課題は多いがデータ欠損という点で有利である.なお,日本人,外国人,トランジットの3区分のデータを一定の仮定に基づいてOD毎に整理する必要があり,多少の恣意性も残る. モデルとしては大橋(2014)と同様の枠組みでBrueckner and Spiller(1994)を援用したものを使って需要・供給要因の同時推定を行った.推定の結果,係数の一部で符号条件に課題のあるものの,理論分析等で考慮されることの多い「輸送密度の経済性」については統計的に有意な結果が得られた.この結果は,ICAOのOFODを利用して日本発着ODに関する国際航空市場特性を検討した大橋(2014)とは異なるものである.統計的な検定結果等については本稿の方が良好であるが,大橋(2014)と同様に利用データや空港選択行動の考慮等の課題も指摘される.さらに,紙上毎の特性として,方面別ダミー変数等を導入しているが,それらは統計的に有意であり,市場毎の特性を考慮することの必要性が明らかにされたと考える.
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