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2012 年度 実施状況報告書

企業結合規制における合併シミュレーション分析の現実妥当性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24530289
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北大学

研究代表者

泉田 成美  東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50272505)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード企業結合規制 / 合併シミュレーション / 関連市場の画定
研究概要

合併シミュレーション分析が欧米の企業結合規制においてどの程度利用されているか確認するために、米国およびEUにおける合併訴訟の記録を調査した。その結果、1990年代から現在に至るまで、合併シミュレーション分析が企業結合規制に用いられたケースはごくわずかであるとともに、そのわずかな事例においても裁判所から不十分な分析であると判断されていることが判明した。また、裁判記録からは、そのような事態となった原因は市場画定の困難さにあるのではないかと推測された。すなわち、合併シュミレーション分析を行うためには、それに先行して関連市場を画定する必要があるが、企業結合ガイドラインで提唱されているSSNIPテストでの関連市場の画定が非常に困難であることが合併シュミレーション分析の利用を妨げていると推測された。
そのため、日本のセメント産業を対象に、合併シュミレーション分析が適用可能かどうかを検証した。その結果、合併シミュレーション分析に先立つ関連市場の画定のためのSSNIPテストにおいて、日本国内市場が単独の関連市場を構成していないという結果が得られた。そのため、関連市場の範囲を画定することができず、合併シミュレーション分析は適用できないと考えざるを得ない。仮に日本国内市場を単独の関連市場であると誤った判断をして合併シミュレーション分析を行った場合には、実際の価格の変化よりも非常に大きな価格の上昇を誤って予測することとなり、誤った政策判断を導くことになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

合併シミュレーション分析は1990年代に米国連邦司法省のエコノミストが開発した分析方法であり、どのような分析を行えば合併後の価格変化を合併前に予測できるのかについて理論的に提案したものである。
研究計画策定当初は、合併シミュレーション分析が現実に適用可能な分析方法であると考えていた。しかしながら、研究を進めていく過程で、合併シュミレーション分析に先立って解決しておかなければならない市場画定分析、すなわち関連市場の範囲を画定するための分析が非常に困難であり、市場範囲が画定できない可能性が存在することが明らかになった。市場範囲が画定できなければ合併シミュレーション分析において信頼性の高い予測をすることはできなくなる。
このような方向で研究が進展することは全くの予想外であったため、当初予定していた海外調査を取りやめざるを得なくなった。以上の理由により、「やや遅れている」という自己評価を行った。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、企業結合規制における合併シミュレーション分析の現実妥当性を明らかにすることである。当初の予想に反して、市場画定分析が非常に困難であり、合併シミュレーション分析が実行できないケースが予想以上に存在する可能性があると考えられるにいたった。そのため、合併シミュレーション分析の現実妥当性は非常に低いという結論が導出される可能性があることも視野に入れて、どのような財において明確に市場画定ができるのかについて検証していく予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額は、当初計画していた海外調査を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した海外調査に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] セメント産業における水平的合併と共同事業会社による生産性と価格への影響2012

    • 著者名/発表者名
      泉田成美・渡部領介
    • 学会等名
      日本経済学会
    • 発表場所
      九州産業大学
    • 年月日
      20121007-20121007

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公開日: 2014-07-24  

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