本研究の目的は、省エネ住宅化を進める支援制度の政策効果を定量的に明確にすることである。省エネ住宅の普及要因を明らかにするためにも、モデル分析やアンケート調査から政策効果を計測した。 まず、住宅エコポイント制度の影響を、住宅産業の従事者と消費者の双方から調査した。インターネットアンケートの結果を踏まえ、消費者と住宅産業従事者の住宅エコポイントの評価の違いを把握した。また、住宅エコポイントが断熱リフォームに与えた影響は大きく、住環境の改善による消費者の満足度が高いことや断熱リフォームの件数の増加を確認することができた。一方で、アンケートデータのロジットモデル分析からは、新築での住宅エコポイントが単に住宅購入支援として機能したのではということが推測される結果となった。効果的な成果を導くための制度設計としての工夫が、必要であることが示唆された。 シミュレーション分析から、住宅エコポイントの果たした経済的効果とCO2削減効果を計測した。家電エコポイントと比較しても、経済的効果とCO2削減効果が大きいことを検証できた。特に、既存住宅の断熱リフォームではCO2削減効果が大きいことが分かった。既存住宅は住宅市場の大半を占める点、消費者の断熱リフォームの満足度が高い点から今後既存住宅への対応の重要性が思料された。 住宅エコポイントのような経済的インセンティブは、消費者の購買行動に刺激を与えるものの、その後の省エネ行動と連動するか否かは、曖昧な結果となった。この点に関しては、今後の課題である。 本研究により「住宅供給事業者が認識する住宅断熱性能への政策等の効果」と「住宅エコポイントの断熱性能向上効果と経済波及効果」の査読論文を作成し、「既存住宅と省エネ対策―住宅流通時におけるエネルギー証明施策の効果―」の報告書をまとめることができた。その他、査読無論文3本、学会発表などの研究実績をあげている。
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