研究課題/領域番号 |
24530294
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
寺田 一薫 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (80197798)
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キーワード | 地方分権 / 補完性の原則 / 交通計画 / 需要応答型輸送 / コミュニティバス / 広域連携 / 離島航路 / 地方鉄道 |
研究概要 |
本研究では、地方分権下での地方自治体、とりわけ基礎自治体として位置づけられている市町村の交通政策について、その広域連携の可能性、中央政府、都道府県、および市町村という3階梯の政府の戦略的行動の結果を、補完性等の観点から研究している。 平成25年度は、限界集落、買物難民、医療格差などの社会問題と密接な関係を持つと考えられるバス、コミュニティバス(和製英語)、乗合タクシー、需要応答型輸送(デマンド交通)、離島航路、地方鉄道に対する地方自治体の政策対応について、将来進むであろう地方分権下での市町村の主体的行動を前提とした分析を行った。その中で、市町村が関与して策定した地域公共交通活性化・再生総合事業下での総合連携計画、ネットワーク網計画等の公共交通計画、関連した交通事業者、住民代表等との協議プロセスについて、実態を調査した。市町村の行動との対比のため、離島航路等に関して対応した計画・協議を担っている都道府県の行動についても調査した。また、結果的に公共交通利用数増加などの成果をあげている事例について、関係者からの聞き取り調査を行った。 加えて、市町村が住民の移動ニーズをどう捉えているかについて、アクセシビリティ、社会的排除(ソーシャル・インクルージョン)、移動権、ユニバーサル・サービス等の概念に関する既往研究、内外での政策アジェンダを文献調査した。とくに、アクセシビリティ概念については研究が多く、最近の学問的展開がみられることから、慎重に文献調査結果を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付金の包括補助化ないし一般補助化を中心とした、中央政府、都道府県、市町村の財政関係については、既往文献整理、理論的枠組み整理を概ね終了した。ただし、市町村、とくに定住自立圏実施自治体へのインタビュー調査に関しては、一部完了した。 市町村間の広域連携については、総務省定住自立圏構想等の枠組み外の一般的ケースに関する情報収集を行った。離島等地形・制度環境が特殊なケースについての調査も開始した。 ・市町村の交通政策の実態という本研究の中心的テーマに関しては、需要応答型輸送(DRT、デマンド交通)の広域的運行、小規模な地方鉄道再生のケースを中心に調査を一定程度完了した。離島航路、離島バスならびに一部の離島航空のケースに関しては調査を継続中である。関連したアクセシビリティ等の学問的概念整理については、前年度の調査を補強する追加的文献調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
離島航路・離島バス等特殊な交通機関をめぐる市町村の対応についての調査を継続する。中央政府、都道府県、市町村の財政的補完性に関する調査に関し、都道府県の制度的環境と行動が複雑であることが判明したので、その点を踏まえた理論・実態整理を行う。また、英国に関する海外実態調査、他の諸国の実態に関する文献調査を行い、わが国との比較制度分析に基づく総括を行う。そのうえで、バス、コミュニティバス、乗合タクシー、需要応答型輸送(デマンド交通)、離島航路、地方鉄道、一部の離島航空を含めた総合的知見を導出し、それらの実態調査結果と理論的整理を総合化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
定住自立圏実施市町村、市町村の広域連携一般に関する実態調査3件、ならびに需要応答型輸送に関する実態調査1件について、インタビュー調査先との日程調整がつかず、次年度に延期せざるを得なかった。そのことに関連し、調査結果のデータベース化、定性的情報の取りまとめが遅れ、これらについても次年度に延期した。 滋賀県彦根市、秋田県由利本荘市、山形県鶴岡市において定住自立圏構想実施と広域連携に関する実態調査、熊本県菊池市において需要応答型輸送の実態に関する調査を実施する。その結果を定量的、定性的側面に分けて解析する。
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