本研究では、地方分権下での地域公共交通政策のあり方を分析した。分析の中心は、国が地方政府に対して支払う交付金の包括補助金化ないし一般補助金化の影響においた。国から地方自治体への補助には特定補助金と一般補助金がある。特定補助金では資源配分の歪みが生じ、かつ過剰な外形制限につながることが多い。一方の一般補助金では、国が自治体の行動を全く誘導できなくなる。これらのトレードオフをバランスするため、使途を大枠で決め、枠内では制限しない包括補助金に注目が集まっている。 研究では、特定補助金に近い包括補助金である国土交通省地域公共交通活性化・再生総合事業、ならびに一般補助金に近い包括補助金としての総務省定住自立圏制度の交通政策への影響を調査した。 公共交通はネットワークを形成するので、市町村間連携がうまくいかなければ、地域社会のモビリティを確保することが困難になる。市町村が単独で運営するコミュニティバスだけでは地域住民のモビリティを確保できない。調査では、需要応答型輸送(DRT)によってそれを確保するという次善的政策の実行可能性についても調査した。需要応答型輸送の実態と課題については、国際比較を含めて調査を行った。 本年度の調査では、一連の分析の対象をフェリー等の離島交通分野に拡大した。その結果、離島交通分野では、財政的な国の関与度合いが大きいことに伴い、特定補助金の持つ歪みが顕在化していることが判明した。現状では市町村の関与が小さいため、問題はもっぱら国と都道府県の間で発生していることがわかった。その一方で、包括補助金・一般補助金化が交通モード間の縦割りを解消し、輸送のシームレス化に寄与しているという傾向は、離島航路のケースにもある程度当てはまっていた。
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