研究課題/領域番号 |
24530296
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
徳井 丞次 信州大学, 経済学部, 教授 (90192658)
|
研究分担者 |
川崎 一泰 東洋大学, 経済学部, 教授 (40338752)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 地域間産業連関表 / サプライチェーン / 自然災害 |
研究概要 |
本研究プロジェクトの目的は、東日本大震災の直後に生じたサプライチェーン途絶効果の大きさと波及を分析し、その結果を踏まえてこうした間接被害を軽減するための示唆を得ることである。そこで、まず東日本大震災の産業別被害額の大きさを、被災地域の市町村別産業立地データなどから独自に推計し、その推計値と地域間産業連関表を使って、産業連関の供給側の波及である前方連関の概念に基づき分析した。その際に、標準的な前方連関効果の分析方法を少し修正し、一次波及時には製造業から製造業への投入には最大被害部門がボトルネックとなる条件を加えた。さらに地域間の中間投入の代替性についても複数の前提に基づき計算を行い、実際の震災直後の生産活動への波及状況の地域間パターンとの比較から最も当てはまる前提を選択した。 震災による被災地の生産活動への直接被害は、被害の大きかった沿岸部での立地状況を反映して、商業、建設、電力などを中心とした非製造業に集中しているのに対して、サプライチェーン途絶による全国の生産活動への影響では自動車分野を始めとした製造業で顕著に生じることが分かる。また、サプライチェーン途絶による間接被害の影響は大きく、一次波及まででも生産に対する直接被害を上回る影響が、二次波及以降の全効果ではさらに大きな影響が生じることが分かった。 また、こうしたサプライチェーン途絶による間接被害を「減災」する上で、サプライチェーンの供給元を2地域に分散させる効果は顕著で、東日本大震災の事例を使った我々のシミュレーションでは、これによって5分の1ほどに間接被害を軽減することができることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容については申請前から準備して取り掛かっていたもので、平成24年度には研究計画に沿って引き続き研究を進めて英語論文を作成し研究発表を行った。しかし、ここまでの段階ではデータの制約等から検討がなお不十分な部分もあり、こうした点について今後研究を深める必要がある。こうした次のステップへの準備の一つとして、平成24年度中に、製造業の産業細分類ベースの被災地市区町村別立地データを、工業統計の個票データの独自集計を行っている。現在までの研究では、地域間の中間投入の代替性については複数の前提の下での計算結果を現実の地域間波及パターンの比較によって研究を進めているが、今後は細分類ベースの産業立地状況を地域間で比較するなどして情報を補完し、より信頼度の高い結果を得たいと計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
地域間産業連関表を使ってサプライチェーン途絶効果の波及パターンを複製する上では、標準的な前方連関効果の手法だけでは十分でなく、製造業から製造業の中間投入における代替性、地域間の代替性などについて追加的な前提を加える必要があった。また、そうした際に複数の代替的な前提の選択が求められる際には、そうした前提の下での計算結果を現実の地域間波及パターンと比較することによって、最も近似したパターンを得られるものを選択している。こうした方法から得られた結果についてより信頼度を高めるためには、とりわけ製造業の地域間の産業立地状況についてより詳細に分析を加え、被災地域とその他地域の産業立地状況の類似性の程度等からも正当化できるものであることを示す必要がある。すでに産業細分類ベースの被災地市区町村別立地データを、工業統計の個票データの独自集計を行っているので、これらを使ってこうした分析を加えるとともに、前方連関の現実的な波及回数の判断なども含めて、さらに分析を精緻化していく計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
データ整理、文献購入、研究分担者との研究打ち合わせのための旅費などに充てる。なお、平成24年度には年度後半にそれまでの研究成果を英語論文にまとめることに注力したため、若干の次年度繰越額が生じた。平成25年度は、新たな分析に進むので、予定額を使い切る計画である。
|