研究課題/領域番号 |
24530298
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
劉 徳強 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (10240417)
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研究分担者 |
岑 智偉 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30340433)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国 |
研究概要 |
本研究は、中国の高度成長を支えてきた安価な労働力、高い投資比率、大量な資源エネルギーの投入、比較的寛容な環境制約などの要素は2008年の世界金融危機と共にその役割が変化し、今後のさらなる成長への制約となりつつである状況の中で、これまでに中国経済成長に大きく貢献してきた外国からの直接投資(FDI)が、中国の成長方式の転換にどのような役割を果たしうるのかについて、(1)外資企業の進出が中国国内の労働分配率向上に影響を及ぼしているか否か;(2)外資企業が中国の産業技術水準の向上に寄与しているか否か;(3)外資企業は中国における省エネ・汚染削減に貢献しているか否かを、マクロデータ及びミクロデータ(独自の調査データ)、地域別産業別データで理論的・実証的に解明することである。 本年度では、予備調査(上海、広州と東莞)とサーベイを含む基礎研究を行った。予備調査では、かつて安価な労働力を主な投資目的とした外資系企業の狙いは今後の中国国内市場性に変わり移り、高度な技術力をもち中国国内でも競争性のある外資企業が進出していることは判明した。この事実と本研究で明らかにしようとしている課題とどのような関連性をもつかについて、ミクロデータなどに基づくより厳密な計量分析が必要であると考える。一方、基礎研究では、中国成長方式の転換を念頭におきながら、まず中国経済成長方式とは何かについて、伝統的な成長モデル(Solow modelなど)、いわゆる「中国モデル(北京コンセンサス)」などを参照しながら整理し、その上で外国直接投資と本研究課題との関連性、とりわけ中国長期成長の主な源泉である技術進歩との関連性に注目し、マクロデータによる検証が行われたが、ミクロデータなどに基づく検証を次の課題とする。基礎研究の内容は共同論文としてまとめ、2013年6月23日に開催される中国経済学会全国大会で報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまでの中国の経済成長に大きく貢献してきた外国直接投資が中国の経済成長の方式の転換にどのような役割を果たしうるかについて理論的、実証的に分析しようとするものである。 初年度では、①中国における成長方式の転換に関する政策や先行研究を整理し、②経済成長理論に基づく分析枠組みの構築を行った。また、③戦後日本の経済成長過程を統計データに基づいて概観し、日本経済と比べて中国経済の位置(おおよそ日本の1960年代後半に相当)を明らかにした。最後に、昨年9月に中国の上海と広東省にある外資企業と国内企業をそれぞれ訪問し、中国の成長方式に与える外資企業の影響をミクロレベルで確認する作業を行った。 このように、初年度に予定された研究作業はほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中心的作業は研究計画に掲げた3つの問題を検討することである。3つの問題とは、①外資企業の進出が中国国内の労働分配率の向上に寄与したかどうか、②外資企業が中国の産業技術水準の向上に寄与したかどうか、③外資企業は中国における省エネ・汚染削減に貢献したかどうか、である。 これらの問題を検証するために、今年度の8月に中国の上海と広東省で外資企業と国内企業を対象とするアンケート調査を行う予定である。それによって収集されたデータを用いて、研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、以下のように研究費を使用する予定である。 ①外資企業と国内企業(100社)を対象とするアンケート調査を行うために、100万円を中国側の協力先に支払う予定である。 ②調査実施のために中国の上海と広東省に行く予定で、そのための旅費として計36万円使用する予定である。 ③アンケートで収集されたデータを整理分析するための人件費として24万円支出する予定である。 ④その他物品費としてノートパソコンを一台購入する予定である。
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