研究課題/領域番号 |
24530298
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
劉 徳強 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (10240417)
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研究分担者 |
岑 智偉 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30340433)
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キーワード | 成長方式転換 / FDI / スピルオーバー |
研究概要 |
予定していた中国における外資系と内資系企業を対象とするアンケート調査は諸般の事情により実施できなかった。その代わりに、昨年度では中国成長方式の転換を念頭に、これまで中国経済成長におけるFDI(外国直接投資)と貿易の経済的効果について数量的に評価する共同論文を完成した。 論文は時系列分析方法や内生的成長の分析方法などで、1980-2004における中国地域マクロデータなどを用いて、中国経済における貿易とFDIの長期成長効果、中国地域経済発展におけるFDIの間接的効果であるFDIのスピルオーバー効果、FDIの国内企業に対するクラウディング・アウト(イン)効果について測定した。主な結果は以下の通りである。第1に、GDPを被説明変数、貿易やFDIなどを説明変数とした6つの推計モデルについての推計結果では、全てのモデルにおける変数間に共和分関係が検出され、長期均衡への調整力を示す誤差項修正モデルの関連推定値も有意に得られた。そして、GDPと諸変数の関係について、フローの貿易のGDPに対する弾性値は低いが、過去のFDI投資効果を考慮に入れた場合のストックのFDIによるGDPへの弾性値が高いであることがわかった。第2に、FDIのスピルオーバー効果についての測定結果として、FDIのスピルオーバー効果を表すFDIの推定値はマイナスであり、人的資本とFDIの交差項(FDI×人的資本)の推定値はプラスとなっていることが判明された。これは「人的資本閾値」仮説が中国においても成立されることを示唆する。第3に、FDIによるクラウディング・アウト(イン)の推計では、外資系企業が少ない中部と西部地域では、クラウディング・イン効果が検出されたが、東部地域において、2005-2007と2001-2007の期間ではどちらの効果も言えないが、他の推定期間ではクラウディング・アウト効果が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究では、元々中国における国内企業及び外資系企業を対象にアンケート調査を実施し、それによって得られたミクロデータを分析をし、仮説を検証する予定だった。しかし、左近の日中関係など諸般の事情により中国でのアンケート調査の実施は難しくなったため、本研究は幾分遅くなってしまった。そこで、代替的な方法として、中国政府が収集した企業別データを利用し、研究を進めざるを得なかった。幸いなことに、企業のミクロデータを一部入手することができたため、不完全ながらも研究を進める目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れを挽回し、今年度内に本研究課題を完成するために、研究代表者及び共同研究者は今まで以上に全力を挙げてデータの解析を行う予定である。また、作業効率を高めるために、指導する一部の大学院生にも研究補佐員として研究プロジェクトに協力してもらうことを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度予定した中国でのアンケート調査が実施されなかったため、その分の予算が残された。 前年度の残余金約140万円と今年度の予算額117万円の約257万円があるが、使用計画としては引き続きアンケート調査の可能性を探っていくため、120万円計上する。残りの137万円のうち、中国への出張旅費60万円(2人×12日)と研究補助40万円、学会報告など国内出張24万円(2人×2回×6万円)と今年度では、報告書作成10万円、消耗品3万円。
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