研究課題/領域番号 |
24530300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
橋本 貴彦 立命館大学, 経済学部, 准教授 (80510726)
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研究分担者 |
田中 祐二 立命館大学, 経済学部, 教授 (40217089)
松本 朗 立命館大学, 経済学部, 教授 (70229540)
佐野 聖香 東洋大学, 経済学部, 准教授 (40469094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生産性 / 為替レート / 労働の質 / マルクス / 国際的分業 / 全労働生産性 / 産業連関 |
研究概要 |
研究計画初年度の2012年度において,実質為替レートと生産性の関係に関する先行研究を整理するため,研究会を5回開催した。本研究計画では,特に,国際的分業について着目し,多国間の比較を行う際の生産性指標に関する先行研究の整理を行うという目的を設定し,新古典派経済学からマルクス経済学に至る幅広い学説に関する整理を行った。そのため,研究会では,研究代表者と研究分担者の他に国際経済学を主たる研究分野とする研究者に参加を依頼し,報告とコメントを依頼した。その成果をまとめた初年度の研究成果は,論文2本とその他2本である。 代表者の橋本貴彦は,1980年代以降の海外のマルクス学派の研究について整理し,論文としてまとめた。そこでは,国際的分業の効果を明示的に組み入れた生産性指標を用いることの経済学的な意義について検討した。そして,国際的分業や分業の効果を否定的に捉える研究の限界について評価した。最終的に,国際的分業や分業の効果を分析することが可能な価値の逆数である全労働生産性(Total Labor Productivity)という生産性指標について着目すべきという結論を得た。また,本研究計画では,各々の国での価格水準の決定メカニズムや計量の方法の整理と解明が重要であるが,研究分担者の松本朗は,広くマルクス学派における価格と価値の関係について,特に金と為替相場という切り口から検討した。成果は論文としてまとめている。 また研究会では,実質為替レートと生産性指標とを計量分析するための諸問題についても検討した。その際に,生産性を測定する際に必要となる直接的労働量の計量,特に異なる国同士の労働の質(人的資本や異質労働の問題とも呼ばれる)に関する捉え方や計量の方法の問題点について指摘があり,この点について論点を整理しつつある。この課題は13年度も引き続き取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度では,実質為替レートと生産性に関する理論的な側面からの先行研究整理を行うことを計画し,関連する多様な学説を生産性指標の選択に関する課題を解決する糸口を見出すことができた。この成果を学会部会や学会等で報告しかつその成果を論文にまとめ,関連研究者よりコメントをもらうことができた。このことは,理論的なサーベイを行うことを目的とした初年度の計画からみれば,十分な成果といえる。2年目以降の実証研究につなげるという意味においても,大きな成果であったといえる。以上の理由から,「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の2年目である2013年度において,実質為替レートと生産性の関係に関する実証研究を実施する準備を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画を推進するにあたって,海外研究者との連携(具体的には研究代表者が米国での学会報告を予定し,その際に関連研究者からコメントをもらうこと)を計画初年度の2012年度に当初予定していたが,この事項を次年度以降に移すこととした。その分,国内での研究会の回数を増やし,初年度の主要な目的である理論的な側面からの先行研究整理を進展させることに注力した。 当初計画に比して,増大した次年度使用額については,研究成果の一部を国際学会(国際産業連関学会)で報告することや海外研究者の招聘の経費に充てることにする。
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