研究課題/領域番号 |
24530300
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
橋本 貴彦 立命館大学, 経済学部, 准教授 (80510726)
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研究分担者 |
田中 祐二 立命館大学, 経済学部, 教授 (40217089)
松本 朗 立命館大学, 経済学部, 教授 (70229540)
佐野 聖香 東洋大学, 経済学部, 准教授 (40469094)
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キーワード | 為替レート / 生産性 / 分業 / 中間財貿易 / 国際産業連関表 / 国際価値論 |
研究概要 |
研究計画2年目にあたる2013年度の研究成果は、論文2本及び翻訳1本であった。研究分担者間の研究会は6回開催した。 本年度の研究計画で、為替レートと生産性に係る理論的なサーベイと実証的な準備についてであった。 第一に、理論的なサーベイは、研究代表である橋本の他、研究分担者である田中祐二氏と松本朗氏が担当であり、為替レートと生産性(マルクスの価値の逆数)について2本の論文を執筆した。また同内容のテーマの重要な先行研究であるStephan Kruger氏の研究論文について松本朗が翻訳している。 この中で、二国間の生産性格差が実質為替レートに影響を与えるという先行研究での知見に加えて生産性格差の内容に資本・労働比率という技術のタイプの識別の重要性と直接投資との関わりを指摘した点が大きな成果である。代表者の橋本と松本朗氏がこれらの研究成果をまとめ、生産性と為替レートの研究の第一人者であるAnwar Shaikh教授(New Shcool for Social Research)と研究交流を行った。さらに、外部の公開されたセミナーを関連分野の研究者である秋山誠一教授(国学院大学短期大学)を招聘しご報告いただき、主に為替レートを巡るマルクス経済学分野での解釈について議論をした。 第二に、名目為替レートと生産性との関係について検証することにあった。担当は橋本貴彦と研究分担者の佐野聖香氏であった。具体的には、2012年3月に公開された世界産業連関表データベース(対象国40ヶ国35産業)を用い両者の関係を計量し、いくつかの興味深い結論を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているとした理由を以下に記す。 第一に、研究計画の柱である理論的なサーベイについては、翻訳1本、論文として2本の成果を出すなど、予定していた進捗を挙げている。本年度、理論的検証グループにおいて、為替レートと生産性の関連を検討する際には、資本労働比率が重要な指標であることを解明できた。そこで、2014年度はこの点を理論的な課題として研究を進める予定である。さらに、年度末に研究交流をする中で、Shaikh教授と我々とは、二国間における生産性と実質為替レートで測った価格との関係についての認識に相違があり、この点の研究は国際的にも進展しておらず、実証的な観点から検証することの研究上の重要性を確認した。 実証的な成果だが、研究目的である為替レートと生産性との関係を検証できる実証結果が揃っていきている。この実証結果とは、世界産業連関表による計量の結果である。これら計量の結果の概要であるが、世界産業連関表でみた場合、1995年以降の十数年の間に国際的分業の進化や生産性の変化は、それぞれの国の物価水準や貨幣賃金率の水準よりも、名目為替レートの変動によってかなり強力に説明できることが明らかになっている。因果関係としては、名目為替レートから出発し、多国間の分業の進展、ある国同士の生産性格差の決定という関係になる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度までの研究成果や明らかになった生産性と為替レート(名目と実質)の関係について、理論的及び実証的な観点からの成果を取りまとめて行く予定である。具体的な2014年度の研究の推進方策を以下に述べる。 第一に、2013年度まで実施してきた研究分担者間での研究打ち合わせを引き続き、月1回のペースで実施する。第二に、この2年間の成果を到達点を確認すべく、2014年8月20日および21日に「Productivity Measurement and Exchange Rates(生産性計測と為替レート)」と題し、国際セミナーを立命館大学で開催する。連携研究者であるLeonardo Basso教授(Mackenzie Presbyterian University)ら数名が来日し、研究交流をする予定である。このセミナーで、最終的な研究成果に向けた各自の論文や報告書の内容をブラッシュ・アップする予定である。 最終年度である2014年度において、理論的な検証を行ってきた班と実証的な検証を行ってきた班との研究交流をこれまで以上に密にして行う。具体的な研究課題としては、為替レートと生産性との関連に関する実証的な検証を行う。生産性の計測の際に、資本労働比率も加えた検証が可能かどうかが本年度の課題となる。また、Shaikh教授の主張する二国間における価格と生産性との間の強い相関関係を、統計的に見出すことができるかについても課題である。これらの点が明らかになれば、大きな研究成果となるはずである。 さらに、より研究成果を具体的な対象でみて検証する方向も進める。具体的には、世界産業連関表での実証計画に加えて、日本と中国に対象を絞った研究も同時に進めることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者間で協議して予算計画と執行計画を定めたのであるが、2013年度に実施したShaikh教授との協議のための渡航費用が予想以上に少額で済んだため、次年度使用額が生じた。 2014年8月20日および21日にセミナーを開催する。このセミナーにBasso教授を招聘予定だが、招聘費用を上述の次年度使用額の一部を用いて執行する計画である。
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